第4話

同期入社の私達は、研修期間グループを組んで各部署を回った。同じグループには女子が3人、男子が3人の6人。


 リーダー気質の加茂川かもがわ礼司れいじに、末っ子気質の八重樫やえがし健太郎けんたろう、そして春織の男子3人。


 その年の新入社員の中でダントツの可愛さの美馬みま香恋かれんに、姉御肌の綺麗系女子の相坂いいさか香子きょうこ、そして私。


 個性の強いグループになんで平凡な私が組み込まれたかいまだに謎だ。


 でも、それなりにうまくいっていたと思う。


 勿論、同じグループだった女子はみんな春織に一目惚れだった。入社同時の春織は今より少し幼い印象で、笑顔の可愛い犬みたいなタイプの人懐こそうな男子だった。


 だから、同期の男性社員ともすぐに仲良くなって、上司にも可愛がられていた。もちろん女性社員にも優しかった。


 そんな彼に恋人がいないと分かってからの女性社員達のアピールは、女子力底辺の私から見れば、感心、尊敬に値するものばかりだった。


 中にはストーカー紛いのヤバイ行動をする人もいたけど。


 私も人知れず好意を抱いていたわけだから、彼の告白の行方は気になっていた。


 けれど社内でも可愛いと評判の女性社員達が悉く振られる様を見れば、自分が告白するなんてそんな恐れ多いことできるわけがないと早々に白旗をあげて、傍観者に成り下がった。


 初めは、告白を断る様もそこまで悪い印象ではなかったように思う。


 無事に研修を終えて、配属場所も決まり、仕事に余裕が出てきたころ、春織が告白してきた相手をこっ酷く、冷たく振っていると噂で聞いたのだ。


 仕事中は入社当時のまま、優しくて明るい春織が、告白の場面になると冷たい態度で女性達を振る。


 なんだか少し違和感も感じていたけれど、実際に振られた女性達は、口を揃えて「告白した時の春くんはヒドイ!」と恋する相手を罵るのだ。


 モテる人にはモテる人にしか分からない苦しみもあるのかもしれない。だからって勇気を振り絞って想いを伝えてくれた女性達に対する態度にしてはあんまりだと少し寂しく感じていた。


 やっぱり、春織は春織だ。

 人懐っこくて、優しい。人を思いやることができる私の知ってる春織のままだったんだと嬉しかった。

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