第5話

え!……なんで泣くんだよ?


 さっきまで幸せそうに先輩の話をしていた青羽の目が、今は大粒の涙を溜めて驚いた顔で俺を見ていた。


 青羽を泣かせたのは、小学校の頃以来だ。


 あの頃、幼馴染でいつもそばにいる俺らはクラスメイト達から事あるごとにから揶揄われた。


 今だったら気にもならないような、馬鹿みたいな揶揄いの言葉に多感な年代だった俺は、青羽に離れるように言い放ったことがあった。


 別に二度と会わない訳じゃないし、学校でだけ距離を取れたらよかった。


 あの時もこんな顔をして俺を見て、ポロポロと声もなく泣いた。


 それがひどくショックで、あれ以来俺の中では『離れる』という言葉は青羽に対しては禁忌になった。


 そのせいで今苦しい思いをしているのだが、青羽を泣かせるよりはましだと自分に言い聞かせている。


 だけど、俺は今別に禁忌は口にしていない。


 それよりも、俺なりに応援したつもりだったのに。

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