第4話

読んでいた参考書を机の上に置き、小さく溜息をついた里大が呆れたように呟いた。


 「いい加減、影から見てるばっかじゃなくて告ればいいだろ」


 「……え?」


 言葉の意味を理解できなかったわけじゃない。


 でも、こんなふうに彼が告白を急かすような言い方をしたのは初めてで、だから心底驚いた。


 今まで、私が一方的に好きな(フリ)人の話を聞かせて、それをただうるさそうに聞いていた里大。


 私にとっては、それが逆に嬉しかった。


 推しに熱をあげる女子の戯言だと、そんなふうに軽くみられていたのだとしても、その方が良かった。


 こんな風に背中を押されたら、ショックでしかない。


 一気に鳩尾の辺りが苦しくなって、目元が熱くなって、視界が波打ったように歪んだ。


 目の前の里大の目が大きく見開かれたのが、なんとなく見えて、自分の愚行に気づいた。

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