第3話

「そういうこと学校で言わないでよ!」


 真っ赤になって怒る青羽を横目で見て、広げていた参考書で口元を隠した。


 ばあちゃんの代わりに、米袋抱えてよろけつつ歩く青羽の姿を思い出しておかしくなったからだ。


 青羽は優しい。


 人を気遣い、自分は無理しても相手を優先する。


 その優しさに傷つくところだって、たくさん見てきた。


 俺にしとけばいいのに。


 いつも誰かに一生懸命恋をして、そして傷つく彼女に声には出さずに思ってた。


 中学の頃、同じクラスの女子に青羽が言った言葉が、俺の心臓に小さな棘を立てた。


 『里大のことは同じ歳だけど、弟にしか見えないから』


 決定的な対象外発言に、俺の心臓に刺さった棘はじわじわと深く沈み、小さな傷口から流れる血は、俺の体の奥に溜まっていって苦しくなる一方だ。


 止血する術はない。

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