第10話
「ハイ、受付古城(こじょう)です」
院内薬局からの内線電話に出た私は、聞こえてきた相手の声に思わず息をのんだ。
朝、私と弥生の話題の中心だった城崎さんからで、例の話を思い出してしまったからだ。
『城崎です。お忙しいところすみません』
穏やかな口調に、つい今しがた迄忙しさで滅入っていた心が和んでくる。
「お疲れ様です」
『先ほど外来の佐藤先生から薬について問い合わせがあったんですが、外来の内線電話繋がらなくて』
「そうなんですか?処置でばたついてるのかもしれませんね。子機で繋ぎますか?伝言でも構わなければ私がお伝えしておきます」
『じゃあ、伝言お願いできますか?』
事務的な会話からは、城崎さんの落ち込んだ様子は伺えなかった。
伝言の内容をメモにとって受話器をおけば、少しの淋しさが心に落ちる。
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