第5話
「朱乃、分かってんの?」
嫌に低く冷たい声音が耳に届いて、不思議に思って声の持ち主である弥生を見た。
「何を?」
「何をじゃないよ、私がわざわざこの情報を朝一で朱乃に伝えた理由」
「うん。……えと、なんで?」
首を傾げた私の目の前で、弥生は派手に溜息をついて見せた。
勘弁してよと小さく呟く彼女の様子になんだか居心地が悪い。
「……チャンスを逃さない為でしょっ」
「チャンス?」
「……傷心の城崎氏につけ込むチャンスだよ」
「つけ込む……はぁ?」
思わず大きな声をあげてしまった。
ロッカールームで着替え中だった他の病院スタッフの訝しむ顔に、苦笑いで返してから私は弥生を睨んだ。
「何を言ってるの⁈城崎さん婚約者と別れたばっかりだよ?そんな時に……」
「そんな時だからだよ」
私の言葉を遮った弥生の目は厳しい。
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