第3話
まぁ、いいやと息をついて弥生が耳元で囁く。
「城崎さん、婚約者と別れたらしいよ」
「……は?」
今の表情がゆるいというやつなら、さらにマヌケだと言われても仕方ない位、私は惚けてしまっている。
だって、今なんて言った?
「だから、あんたの敬愛する薬剤師、城崎 圭悟
(きのさき けいご)氏が5年付き合った婚約者
と、昨日別れたらしいよ」
「なんで?」
「別れた理由なんか、知らないよ」
「別れたのは本当なの?」
それすらデマかもしれないと疑ってしまう。それ程城崎さんと婚約者が別れたという話は信じ難くて。
城崎さんは、うちの病院内にある調剤薬局の主任薬剤師だ。
彼はとても優しくて、人当たりがよく面倒見が良いので同じ薬局の皆から慕われている。
目立つ顔立ちではないが、いつも笑顔で、そばにいるとこちらまで穏やかな気持ちになれる。
そんな彼に密かに憧れていた。
だけど、彼には結婚を約束した相手がいることは知っていたし、その相手にベタ惚れな事は、彼が彼女のことを話す様子を見ていれば誰だって分かる。
それ位、彼は彼女に夢中で来年の春にはいよいよ籍を入れると聞いていたのに。
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