第10話

ちらり、視線を向けた先に、まだゴシゴシと拭き続けている男子がいる。



私の視線に気づき、庄司くんは隣に立つ男子へ顔を向ける。



「空井?お前なにやってんの?顔を洗いに行ったかと思ったら、全身水浴びしたのか?」



明らかに空気を読めていない庄司くんの言葉に、私は冷や冷やしながら「違うの」と言葉を投げる。



「私が水撒きしてたら、ホースが抜けちゃって……」



「あぁ!なるほど」



ぽんっと手を打って頷いている。



「災難だったなぁ、空井」



ソライと呼んだ男子の肩をぽんぽん叩きながら、庄司くんはあっさりとしたものだ。



そりゃ水をかけられたわけではないのだから、それ以外の反応でも困るけど。



「うるさい、保」



不機嫌な声音と共に、タオルをはずした男子の顔が露になる。

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