13話 いちゃつき、怒り、呆れ


お腹を満たし、気になる屋台を巡り終えた俺たち4人。

いつの間にか時間も経過し、提灯に明かりが灯されると、中心にそびえ立つ高台から太鼓を音が響き渡り始めた。


「始まったな!」


「やっぱり祭りと言ったら太鼓だよねー!」


「音が心臓に響く感じですごく良い」


「だんだん人が集まり出したねっ!」


太鼓の演奏に合わせて、その場にいた人たちが楽しそうに周囲を回り始める。

お年寄りの人たちは「よっ!」「せいっ!」と掛け声をあげながら盆踊りのようなものを披露する。


残念ながらほとんどの人は恥ずかしいのか踊ってはいない。

しかし、家族や恋人、友達同士でリズムに合わせて歩いていた。



「ひろ君と沙也加ちゃんは何時なのー?」


「俺たちは確か・・・あと10分くらいだな! 舞依と萌花は?」


「萌花たちは最後の方だから1時間後くらいだよ!」


「そっかっ!じゃあまだ時間あるし始まるまで皆で踊ろうよっ!」


「そうだね!」「うん!」「賛成」



俺と沙也加の番まで時間があったので、みんなの輪に入ってのんびりと歩く。


程よい暗さと明かりに包まれながら周囲を見渡す。

人が多いせいかはぐれないように手を繋いで歩いているのが目に映った。


「・・・・あ、ひろ君・・・えへへ」


「・・・・・・あったかい」


「・・・それは良かった」


俺はなるべく視線を合わせないようにそーっと隣にいる舞依と萌花の手を握った。

それ以上のことを色々経験しているはずだけど、人前でするのは結構緊張した。


だけど、2人の嬉しそうな顔と両手から感じる温かさ。

それに比べれば些細なことだった。


「ほら、沙也加ちゃんも」


「・・・ありがとう、萌花ちゃんっ」


萌花がもう片方の手を沙也加と繋ぐ。

俺達4人は、時間になるまで繋いだ手を揺らしてゆっくり歩いた。







「行こっか沙也加ちゃん!」


「うんっ!早く行こっ!」


俺はペアになっている沙也加ちゃんに声をかける。

先ほど、「交代の準備をして」と係のおじさんに言われていたからだ。


「・・・・じゃ、2人とも後でね!」


「・・・うん!ひろ君頑張ってねー!」


「・・・ひろ君ファイト!」


名残惜しいが繋いでいた手を離して2人と別れる。

そして沙也加ちゃんと2人で櫓に向かう。


「なんか私、緊張して来たよっ!」


「まじ? ・・・俺も緊張して来たわ」


「あははっ!移っちゃったねっ!」


「・・・こ、このやろう、どうしてくれる?!」


「沙也加知らないもーんっ!」


緊張した沙也加を見てなんだか俺まで緊張してきた。

それを咎めるように沙也加を見るが、「私しーらなーいっ」と俺から顔を背けていた。


くそ、可愛いかよ・・

ムカついたので顔を逸らす沙也加に合わせて頬の近くに人差し指を置いた。


「ねぇ、沙也加?」


「うん?どうしたのひろ―――――ふぇ?!・・な、ななななななっ?!」


「ぶっ!ははははははは!変な顔!」


「?!?!?!・・・裕哉っ?!」


タコのように唇を前に出す沙也加の見て爆笑する俺。

沙也加はそれに気づくと、プシューと沸騰したように急激に顔を赤くしてこちらを睨んできた。


「まあ落ち着けよ?そんなにカッカするな?」


「?!ひ、裕哉がやったんでしょっ!」


「ごめんごめん、つい」


「女の子の顔を笑うとか最低なんだからねっ?!」


不満げにこちらを見る沙也加。

だが、反撃するには少し遅かった。


俺たちの目の前には立派な和太鼓が鎮座する櫓があった。


「後で覚えておいてっ!」


そう言ってから沙也加が脇にある階段を上っていく。

・・・やり過ぎたか?


とりあえず謝り倒そう。

俺は慌てて沙也加を追いかけた。 





「お疲れー!いい演奏だったよー!」


「お疲れ様!2人ともよかった!」


演奏を終えた俺と沙也加は、舞依と萌花に合流した。


始める前は緊張していたけど、さっきの沙也加の顔を思い出したら笑ってしまって、結局ほとんど緊張することなく演奏できた。



「沙也加ちゃんが怒ってたみたいだけど、ひろ君何かしたのー?」


「こっちまで叫び声が聞こえてきたよ?」


舞依と萌花が沙也加の方を向く。

どうやらこっちまで聞こえてきたらしい。


「あ、聞いてよ2人ともっ!裕哉が私をからかってくるのっ!」


「だからあれは謝ったでしょ!」


「気持ちがこもってない謝罪には意味がないよっ!」


沙也加がプンプンと手をグーにして文句を言う。


「それに演奏中に足を踏んでくるしっ!」


「いやそれは間違って踏んだだけだってば!なのにそっちがやり返してくるから!」


「間違って踏むわけないじゃんあほ裕哉っ!・・・・このっ!」


「痛?!ちょっと、いきなり何すんだよ!この!」


「「このこのこのぉおおお!」」



お互いを足でけり合う裕哉と沙也加。

舞依と萌花は完全に蚊帳の外だった。彼女なのに。


どこからどう見てもいちゃついているようにしか見えなかった。


周りの大人たちはその光景を見て「青春だなぁ~」とニヤニヤ。

舞依と萌花は「「は?ねぇ、いつまでイチャイチャしてんの?ねぇ?」」と怒りマークを浮かべていた。


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「・・・・萌花ちゃん・・・・そろそろ行こっか」


「・・・・・そうだね舞依ちゃん・・・・」


待てど待てど一向に終わらない2人のイチャイチャ。


いつまで続けるの?


2人は嫉妬や苛立ちを通り越して呆れていた。



今も2人は――


「取ったどー!!」「私の鉢巻きっ!?・・・・ボソボソ・・・・あ、汗かいてたのにっ・・・」「返してほしくば俺の鉢巻きを先に返してもらおうか!」「・・・・くっ(手に持つ裕哉の鉢巻きを見て悩む)・・・・・・・これはダメっ!」「おい?!何言ってんの?!そこは返すところだろ?!」


――全力でイチャイチャしていた。


10分は既に経過していた。


その間に舞依と萌花の手番が回ってきていた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


チラッと2人を見る舞依と萌花。


「ばーかばーかー!!」


「バカって言った方がバカなんですぅー!」


うん、2人のことは諦めよう。

舞依と萌花はそんな2人を放置することにして演奏しに行った。



2人の演奏は、練習よりも力強い音が出ていたという。









★★★

あとがき


作者「・・・・・・・・・・・・・・_(。゚ ཀ 」∠)_ 」


↑砂糖取り過ぎで死にそうな様子



えーっと、メインヒロインは沙也加ちゃんでおk?






読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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