12話 ペアキーホルダー×3

舞依、俺、萌花、沙也加の並びで祭りの会場まで足を進める。

周囲には同じく浴衣姿の子供達や家族で向かう人、老夫婦などが明るい表情で歩いていた。


「何食べようかなー?祭り何て久しぶり!」


「萌花はわたあめ!金魚すくいもしたい!」


「私はたこ焼き食べたいなっ!」


時間と共に漂っていた気恥ずかしい空気が無くなった。

俺を挟んで、ワクワクを隠せない様子の3人が何を食べようか話していた。


会場に到着した俺たちは、とりあえずお腹を満たすことにした。


「ほい、たこ焼き!」


「ひろ君ありがとー!!一緒に食べよー!」


「ありがとひろ君!フーフーしてあげる!」


「私までありがと裕哉っ」


さっそく全員分のたこ焼きを購入した。

女子に持たせるのは良くない、と屋台のオッサンが言っていたので3人には席取りをお願いしていた。


「結構人いるね?」


「1年に一回だしみんな楽しみにしてるんだねー!」


「私は花火楽しみっ!」


「それにカップルも多い。――ひ、ひろ君あーん」


「――あ、ありがと萌花。うん!うまい!」


「ちょ、ちょっと萌花ちゃん!もう!舞依が先なのにー! ――ひろ君、あーん」


「――舞依もありがとな」


「うん!えへへ!」


「・・・っ・・・・・裕哉っ!こっちもあーん!」


「――うお?!さ、沙也加もありがと・・・・」


「・・・は?さ、沙也加ちゃんー?!何してるのかなー?!」


「沙也加ちゃんひろ君と近づきすぎ!」


4人でわちゃわちゃしながらたこ焼きを食べる。

美少女にふーふーされたたこ焼きは美味すぎました。



「おいあれ見ろ・・・」


「美少女3人に”あーん”されている・・・・だと?!」


「「「もげろくそ野郎!」」」



俺に向かって恨めしい視線が飛んでくる気がするが気のせいだろう。

近くを通った男たちが「ちっ!」と舌打ちしてくるのも気のせいだ。



「あ!ひろ君!射的あるよ!!」


お腹も満たしたし祭りが始まるまでまだ少し時間があったので屋台を探索していると、舞依が射的の屋台を発見した。


「ほんとだ!せっかくだしやってみるか!何か欲しいのある?」


「あそこにある可愛い猫のペアキーホルダーが欲しいなー!」


「うーん・・・あ、あれね・・・了解」


舞依が欲しがったのは猫が可愛くデフォルメされたキャラクターのペアキーホルダー。白肌に左耳に赤いリボンを付け、青いガーターベルトを身に着けた可愛らしいキャラクターだった。


「頑張ってひろ君ー!ファイト―!」


舞依の声援を耳にしながら俺はコルク玉を銃に込める。

そして、俺が放った玉は猫の額を打ち抜くと・・・・呆気なく落下。

まさかの一撃で仕留めることが出来た。


「すごーい!!!さすがひろ君ー!!」


「た、たまたまだよ!!」


「――萌花はあのキーホルダーが欲しい!ひろ君お願い!」


「わ、わかった・・!!」



舞依が景品を受け取るのを横目に次の獲物に狙いを定める。

萌花が指すキーホルダーは、全身クリーム色に茶色い帽子を乗せた犬?・・・熊?・・・よくわからないがプリンみたいな色をした可愛いキャラクターだった。


俺は再びコルク玉を込めると、なんとなくぽっちゃりとしたそいつの腹に打ち込んだ。・・・・あ、つい・・・柔らかそうで・・・!!!


――射的で角以外を狙うなんて素人乙。


その言葉を思い出したところで、プリンのようなそいつは呆気なく地面に落ちていった。


「ひろ君すごいすごい!カッコいい!!ありがとう!」


「あ、う、うん・・・・それならよかった!」


もしかして俺射的の才能あったのか?

・・・・ま、まぁ、喜んでくれたならよかったけど!


そして俺は最後の一人――沙也加に視線を向ける。

2人に贈って沙也加には贈らないという選択肢はない。



「私はあれがいいなっ!お願いね裕哉っ!」


「・・・・任された」


沙也加が指していたのは、白肌に黄色の鼻で頭に赤い被り物とその上に青いリボンを付けたウサギのキーホルダーだった。


――どういう服装してんだよこのウサギ・・・耳と頭にかぶせてるってことは伸縮性が重要だから・・・・タイツでも被ってんのか?


内心ツッコミを入れつつ俺は玉を込め、ウサギの丸いしっぽに狙いを定める。

そして放たれた玉は・・・・ウサギを遠くへ吹き飛ばした。


・・・ええええ(困惑)


「やったっ!裕哉ありがとっ!」


「お、おう・・」


なんか俺の良心が痛んだ。



しかし俺は忘れていた。

討ち取った景品がペアキーホルダーであることを。



「ひろ君!これでお揃いだね!」


「絶対に無くさない!大事にする!」


「どこに付けようかなっ!!・・・・・・・え?俺じゃなくて姫花にあげたらって?・・・え、えっと、そうだっ!姫花はこういうの苦手って言ってたんだよっ!だから!」



「コソコソ・・・ねー萌花ちゃんー?沙也加ちゃんはもう隠す気ないみたいだねー」


「コソコソ・・・そうみたいだね・・・・やっぱり毎週付いて行くべきだった・・」




そういうわけで。

俺の手には可愛らしい3つのキーホルダーがあった。


・・・これ、付けないとダメ?・・・あ、ダメですか・・・・そうですか・・・・



皆お揃いでランドセルに付けることになりました。




★★★

あとがき


沙也加ちゃん・・・どうしたんだい・・?




読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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