11話 お互いの浴衣姿にドギマギ


夏祭り当日の今日。

町内にはたくさんの人の賑やかな声が響いていた。


「よし、どうだ裕哉?」


「お父さんありがとう!うん、いい感じ!」


俺は鏡に映る自分の甚平じんべい姿を見て、口元が緩むのを感じる。

自画自賛になってしまうが、髪にもワックスを付けて整えているのも合わさってなかなか凛々しい感じになっていると思う。

清潔感は大事だからな。


「今日は舞依ちゃん、萌花ちゃん、沙也加ちゃんの3人と行くんだって?」


「そ、そうだけど」


「両手に花を超えるモテっぷりじゃないか!」


「あら、ふふ、本当ね~いったい誰に似たんだか」


お父さんの言葉にいつの間にか傍にいたお母さんも同意する。


「向こうの親御さんにも挨拶しないとな!」


「将来の娘になるかもしれないものね!」


「「はははははは!」」


こっぱづかしい事を宣って笑い声をあげる2人。

俺はそんな2人を内心ウザったく思いながらも、今度こそは彼女たちとそんな関係になれたらいいな、と思った。



「おーいひろ君ー!」


「ひろ君、早く行こ!」


「裕哉っ!」


家族でゆっくり会話をすること数分。

チャイムの音に続くように外からは舞依、萌花、沙也加の3人の呼び声が聞こえてきた。


「あ、今行くよ! それじゃ、行ってきます!」


「気を付けてな!」


「楽しんできてね~」


2人の声を背に玄関へ。

そこでこの前買ってもらった子供用の下駄を取り出して装着する。

普段履いている靴とは違って歩くとカタカタと小気味よい音がしていた。


「――おっと、忘れてた!裕哉!これ持ってけ!」


「これは?」


ドアを開ける寸前で慌てた姿のお父さんからポチ袋のようなものを渡された。

これ・・・・・うわ!5000円入ってる?!


「5000円もいいの?!」


「ああ!その分彼女たちにはお金を使わせるなよ?」


「ありがとうお父さん!じゃあ行ってくるね!」


サンキューぱっぱ!


お小遣いが月に500円で使えるお金はお年玉のみの俺にとってはとてもありがたい支援物資だった。・・・まじでバイトしたい。金銭感覚を何でも好きなものを買えた大人から小学生に戻すなんて無理過ぎ。


5000円という小学生の身からすれば大金である軍資金をポケットに投入。

俺は意気揚々と3人の元へ向かった。





「・・・・・・」


俺は女の子の浴衣姿という最終破壊兵器の威力を舐めていた。

前にSNSで見た時は「確かに可愛いけど準備大変だし必要なくね?」とそんな風に思っていたが・・・・甘い、甘すぎた。そんなことを言うやつは直接自分の目で見てから言ってみろって思う。無理だから。


控えめに言って俺の目の前には3人の妖精がいた。


「ひろ君ー?どうしたのー?」


俺は舞依に視線を向けたはいいが逸らせないでいた。


水色がベースで紫が入った浴衣に、片側の前髪をピンで止めているため普段見えないおでこがチラッと覗く。


舞依は可愛らしくて清楚感のある姿をしていた。


「・・・ごめん、・・その、可愛くてつい・・・」


「?!・・・あ、ありがと・・・・その、・・ひろ君もカッコいいよ・・?」


「!!そ、そっか・・・ありがとう・・・」


俺と舞依の顔が真っ赤になるのがわかった。

もともと舞依のことは可愛いとは思っていたけど、特に今日の舞依は破壊力が凄かった。普段見えない舞依のおでこに視線が吸い寄せられるのを感じた。



「・・・ひろ君?萌花は?」


「・・え、あ、ごめん!もちろん萌花も・・・・・」


萌花に袖を摘ままれた俺は慌てて舞依から視線を逸らして萌花の方へ向く。

しかし破壊力が凄いのは舞依だけではなかった。


黒に赤が入った浴衣に、後ろの髪をアップにして黒いリボンで蝶結び。綺麗な黒髪・黒リボンに白いうなじのコントラスト。


萌花はシンプルながら清楚なお嬢様のような姿をしていた。


「・・・すごく似合ってるよ、萌花」


「・・・・ありがと・・・・・ひろ君もカッコいいよ」


「あ、ありがと・・・」


俺の感想に萌花の顔が真っ赤に染まる。・・・え、俺?言わせんなよ・・・


いつもは大人しめの印象の萌花が今日はどこぞの令嬢のような綺麗さを纏う。これがギャップ萌えというやつだろうか。俺の視線は萌花の綺麗で白いうなじに固定されていた。


「・・・つ、次は私だよ裕哉っ?」


「・・沙也加!ごめんそうだ・・・ね・・・・・」


ピンクに白が入った浴衣に、サイドの髪を三つ編みにして後ろと結び、巻かれた髪にカーネーションの花飾り。


沙也加は可愛さと綺麗さを両立したお姉さんギャルみたいな姿をしていた。


「・・・似合ってるよ、その・・・・綺麗だね・・・・」


「っ?!・・・・・(た、大変だったけど頑張ってよかったぁああ)・・・ありがとっ!・・・・・ひ、裕哉もいい感じだねっ・・・・」


「あ、ありがと・・・・」


沙也加が嬉しそうに笑顔になる。・・・え、俺は(以下略)


可愛いのは勿論なんだけどそこに綺麗さが加わったことで、同級生のはずなのに年上な感じがするし年下な感じもする不思議な感覚に陥る。そしてそこに背徳感がある。見てはいけない姿を見てしまった的な。・・・何言ってるんだ俺は。




★★★

あとがき




舞依&萌花「――うん?・・・裕哉?沙也加?・・・ちょっといいかな、2人とも?」


裕哉&沙也加「あっ」







読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!









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