10話 おや・・・少女の様子が・・・?


「裕哉君っ!太鼓叩くタイミング私と被せてこないで!」


・・・・はい??????え??はい????


そろそろ真面目に練習しよう。

俺がそう決意したタイミングで沙也加ちゃんがおかしなことを言ってきた。


・・・何言ってんだこいつ?!



「は?!いやそんなことしてないが?!」


「嘘っ!さっきから被ってるよ!!――あっ!ほら今も!」


「いやいや!俺の方が先だったじゃん!沙也加ちゃんが合わせて来てるよね?!」


「私じゃないよ!偶然でしょ!」


「先にそういったのは沙也加ちゃんじゃん!お前は3秒経ったら記憶をなくすニワトリか?!」


「ニ、ニワトリ?!裕哉君酷いっ!」


太鼓を「ドンドン!」「バンバン!」「ドドドンドン!」と叩きながら俺と沙也加ちゃんは口論を繰り広げる。


しかしその場にいるのは2人だけではない。


「裕哉君と沙也加ちゃん、何してるんだろ?」


「なんかいい感じだよねあの2人!」


「喧嘩してるっぽいけど、いちゃついてるようにしか見えないねー」


「夫婦喧嘩だ!夫婦喧嘩してるぞー!!」


「「「ヒューヒュー!!」」」


その様子を周りにいる子供たちが好き勝手に噂していた。


喧嘩になれば普通取っ組み合いになるか相手を避けるのが常識だった少年少女たちには、2人が本気で喧嘩をしているようには見えていなかったのだから今からじゃどうしようもない。


小学生の噂は広まるのが途轍とてつもなく早いため、今日中に親兄弟に伝わり、来週には学校中に広まっていることだろう。南無なむ



しかしそんな外野の事を2人は気にしていなかった。

いや、正確には自分と相手の声で周りに気付いていなかった。



「裕哉のバカっ!二股野郎!女の敵!」


「それは今関係ないだろ?!」


「認めた!認めたよっ!裕哉が二股だって認めたっ!」


「うるさいアホ沙也加!いつも男の子とばっかり遊んでるくそビッチ!」


「?!そんなことないっ!ビッチじゃないっ!」


「え~?ほんとか~?俺、沙也加が他の女子の男を惚れさせたって聞いたけど~??」


「ち、違うよっ!ちゃんと断ったもんっ!」


「惚れさせたのは事実っと」


「私は悪くないよっ!普通に遊んでたら急に告白されただけだもん!」


「うわ!聞きましたか皆さん!これが沙也加の本性です!それに相手は他にもたくさんいるとのこと!これをビッチと言わずに何というのでしょうか?!」


「うるさいうるさいうるさーーーーーーーーいっ!」



沙也加が太鼓をドンドンドンドンと連打する。

その連打速度は太鼓の達人でいいところを狙えるかもしれない、と思わせるものだった。


・・・よし俺も!

そう思って腕に力を入れようとしたが・・・二の腕や手首に疲労が溜まっておりこれ以上は無理そうだった。


そして、一度冷静になったところで一気に疲労が襲ってくる。


「「はぁ・・・はぁ・・・・」」


マジで疲れた。

俺と沙也加が畳に崩れ落ちるように座り込む。


よく見たら手に豆みたいなのも出来ていた。

本当に何やってんだろう俺・・・はぁ・・・・・・精神年齢云々は無かったことにしよ。忘れてください。


「なんかすっきりした・・・」


「私もっ・・・あのっ、言い過ぎてごめんね、裕哉君」


「こっちこそごめん・・・あと、俺のことは裕哉でいいよ・・・俺も沙也加って呼ぶから」


「え、う、うんっ、わかった!」


沙也加にはついいろいろ言いすぎてしまったので謝罪をして仲直りをする。

さすがに女の子相手には良くなかったよな・・・


だけど幸いなことに雨降って地固まる、今回のことで遠慮なく言い合う関係になり、俺と沙也加は本当に友達になることができた。


いやー!よかったよかった!

偶にはこういうのもいいかもね!ははは!!!


「――裕哉君と沙也加ちゃん・・・・ちょっといいかい・・??」


どうやら見逃してはくれないようだ。

俺たちの前に現れたのは、ピキピキとこめかみに怒りマークを浮かべるお爺さん。


「あ、はい・・・すみませんでした」


「あっ・・・・反省してますっ」


本来の俺たちの役割は下級生が何かしでかさないか確認し、それを注意すること。

しかし、ご存じの通り・・・・・・何の成果もあげられませんでした!



結局俺と沙也加ちゃんは皆が帰った後、居残りで掃除させられました。

・・・はい、あの、本当に反省してます・・・以後は気を付けます・・・・・あと、意味もなく叩きまくられた太鼓さん・・・本当に申し訳ございませんでした。



掃除が終わり軽く注意を受けた後、俺と沙也加2人で夜道を歩く。

話が盛り上がったからか、それとも相手が沙也加だからか・・・帰り道は来るときよりもはるかに短く感じた。


「・・・それじゃ、その・・・またね、裕哉っ!」


「・・・ああ・・じゃあな沙也加!また来週!」


「――うんっ!またね裕哉っ!」


最後にそう別れの言葉をかけて沙也加と別れる。

一応見えなくなるまで手を振ってみたら返してくれたのが結構グッと来た。


今夜はよく眠れそうだった。







一方で先ほどまで裕哉と一緒に歩いていた沙也加はというと。



「――男の人とハグしたの初めてだったけど・・・・・裕哉君・・・ううん、裕哉っ!・・・・・よかったなぁ・・・」


裕哉に抱きしめられた光景を回想していた。


沙也加は、女の子とは違ってゴツゴツとした裕哉の身体に全身を強く抱きしめられた際、という事実を理解した。そしてその後すぐ、嬉しい?気持ちい?に近いような不思議な感覚に陥っていた。同時に、それとは正反対であるはずの安心感のようなものも感じていた。


沙也加にはそれがどのような感情かはわからないが、少なくとも悪い感覚だとは思わなかった。


そしてそのせいか、自分で理解し飲み込む前に自然とその言葉を口にしてしまった。


「――お願いすればまたしてくれるかなっ・・・・・・?!?!・・・・わ、私は何を言ってるのっ?!相手は他に恋人がいるんだよっ?!そんなことして良い訳ないよ・・・・・!!」


自分で自分の言葉に驚愕する沙也加。

内容が内容だけにその言葉を肯定するわけにはいかなかった。


しかしあの時の感覚は、父親のいない家庭で育ち、そして母親からは男の子に注意するように言いつけられてきたために男の子と肉体的な接触が無かった沙也加にとっては、・・・・・・一度体験したら二度と忘れることのできない猛毒だった。



「――――だ、ダメだよ私っ!裕哉は舞依ちゃんと萌花ちゃんの彼氏なんだからダメっ!・・・・変なこと考えたら絶対に・・・・私がされたら嫌だと思うんだから人にしちゃだめだよっ!絶対ダメ!・・・・ダメ・・・ダメ・・・・・本当にダメ、なの、かな・・・?」



沙也加は自身の内からあふれてくる感情に気付きかけていた。







★★★

あとがき



ぎぃいいいいいいーーーーーやぁああああああああーーーーーーーーーー!!!!(作者の脳が破壊される音)






読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る