3話 下校中のイチャイチャ

掃除や帰りの会が終わり児童たちが帰宅し始めるなか。


「ひろ君、待ったー?」


「いや、今来たところだよ」


「そっか、よかったー」


「じゃ、帰るか」


「はーい」


俺と舞依は学校から少し離れた通学路で待ち合わせると、いつも通り一緒に家まで歩いていく。

久しぶりの日常に俺の心は温かくなっていた。


「・・・」


「・・・」


しかし、学校から離れ二人きりになった俺たちだったが、今日に限ってはなかなか話題が弾まなかった。

いつもなら学校でのことや今日何して遊ぶかなど、話題に尽きることはないのだが。


「・・・」


「・・・」


うーん、完全に気まずい雰囲気になってますねこれ。

何でだろう。心当たりしかないな。


・・・そりゃ、朝にいきなり付き合うことになって、その時に俺が調子に乗ったとはいえキスまでしちゃったからなぁ。普段通りに会話する方が難しいって話か。


ここは俺から声をかけるべきか。



「・・・え、えと、舞依?」


「・・な、なに、ひろ君?」



俺は普通に声をかけてから舞依の方を見ようとした・・・・・が、キスしたときの舞依の顔が脳内で再生されるせいでまともに顔を見ることが出来ず・・・・・どもりながら地面へ話しかけていた。


致したときはあんなにガツガツ行ってたのに、冷静になった途端にこれ。

俺はどんだけ初心野郎なんだよ・・・


――ええ、所詮俺は風○経験しかない素人童○ですよー。女の子と話す機会なんてコンビニかスーパーの店員くらいだったしねー。


内心一人愚痴る。


だけど、チラッと舞依を見ると・・・・向こうも同じようで挙動不審だった。緊張しているのは俺だけじゃなかったとわかり安心した。



俺は、「相手は小学生、相手は小学生」と念じて何とか話を切り出した。



「・・・告白受けてくれてありがとう。ま、舞依と恋人同士になれて、なんというか、うれしい」


「・・・・・・・わ、私も、嬉しかった」


「・・そっか、よかった」


やっと交わすことのできた会話。

自然とそこで俺と舞依の視線が交差する。


「「?!」」


お互いに顔が赤くなるのが見なくてもわかった。


ひっひっふー。落ち着け俺。大丈夫だ。


しばらくして。

何とか恥ずかしさを乗り越えることに成功し、俺たちは徐々にいつも通りに話せるようになっていった。


そうなると話題になるのは当然、今朝の俺の行動。

――そう、告白してすぐにキメたディープキスだ。


「本当に気を付けてよね!!私、加奈かなちゃんに見られてたせいで揶揄われたんだから!!」


「あの時はごめん!本当に・・・・以後気を付けます!」


どうやらお友達の加奈ちゃんにばっちり見られていたらしい。

友達が大人な行為をしていたなんて知ったら盛大に揶揄われる事だろう。


・・・揶揄われて慌てふためく舞依、か。・・・想像したら、何だか顔がニヤけてきた――


「あ~もう!!この!少しは反省しろー!」


「ご、ごめんってば!反省してるから!」


「ニヤニヤするな~!!!」


憂さ晴らしをするかのように、俺に軽く蹴りを入れたりはたいてくる舞依。

・・・な?こんなの可愛すぎるだろ?ニヤニヤしてしまうのは舞依が原因だと思うんだ。


美少女、それも好きだった子にこんなことをされたら男ならにやけるのはしょうがないに決まってる。なので俺は悪くない。


威力が徐々に増していく舞依の攻撃に晒されながら俺は帰り道を歩く。



俺たちの地区は昔の商店街のようなものがあるせいかお年寄りが多くいて、いい意味で田舎っぽさがあって好きだ。


なお、そんな町なので、当然帰宅途中に2人でイチャイチャしている男女を見たら声をかけないはずがなく――



「あらー!!本当にいつも裕哉君と舞依ちゃんは仲いいわねー?!」


「青春ねー!でも、今日はなんだかいつもよりも甘いような・・・?」


「あら、あなた知らないの?!裕哉君と舞依ちゃんは今日恋人同士になったのよ?」


「「きゃー!!」」



――と、周囲に気を付けて行動しないとこのように野生のおばあちゃんたちの格好の的になってしまうのだ。



「っ!?~~~おばあちゃんたち!!静かにして!!」


「「「きゃー!!舞依ちゃんが怒ったー!!逃げろー!!」」」



舞依が怒りの形相で走っていくと、あんた達本当元気だなぁ、というスピードで野生のおばあちゃん達は逃げていった。


・・・あの杖は、こちらを油断させるための擬態だったのか?


どうやらおばあちゃんたちの方が1枚上手だったようだ。



「本当!いつもいつも揶揄ってきてムカつくー!!家でこたつに入って茶でもしばいてろ!!」


「え、ちょ、ちょっと舞依?お年寄りにそんなことを言っちゃダメだよ???」



捕まえることが出来なくて不謹慎なことを叫び地団太を踏む舞依に、俺は常識的な忠言を入れる。


しかし、それは舞依には悪手だった。



「何言ってるのひろ君?!もとはと言えばひろ君が悪いんじゃん!!!確かに嬉しかったけどさ、普通人気の少ない所とか、学校裏に呼び出してとか、もっといろいろあるでしょ?!」


「お、落ち着けって舞依!俺が悪かったから!!」



ふぅー!!ふぅー!!と今にも突撃をかましてきそうな様子の舞依をまたしても宥める俺。


しかし、そのちみっこい姿に俺はメロメロになってしまい、思わず・・・・自身の胸で舞依を抱いていた。



「?!・・!・・・・・・」


「落ち着いた?」


「・・・うん」



しばらくそのままでいると、舞依の体から力が抜けていくのがわかった。



「疲れたし、少し休んでいかない?」


「・・・わかった」



丁度近くに座れる場所があったので、二人並んで腰を下ろす。

ただ座っているだけなのに、心地よい日差しに涼やかな風を感じた。


のんびりとしていると、春の温かい日差しに晒されたせいか、無性に眠気が襲ってくるのがわかった。



「・・ひろ君、眠いの?」


「あ、いや・・・うん、そうかも」


「そっか・・・」



眠い、いや、マジで眠い。


最近――といっても前世――はオフィスワークだったから日の光に当たることがあんまり無かったけど・・・・こんなに気持ちいものだったんだ。


ここで寝落ちはまずい。舞依もいるし。それにこの後は舞依たちと遊ぶ予定が入っているんだ。


――動けば眠気も何とかなるか。


そう思い立ち上がろうとする俺。

だが、それよりも先に、俺の後頭部が何か柔らかいもので包まれた。



「・・・・」


「・・・えっと・・・・ど、どうかな・・・この前カップルがやってるのをテレビで見たんだけど・・・?」



俺の目に映るのは、恥ずかしそうにこちらを見下ろす舞依の姿。


――膝枕、好きな子の膝枕。


これは・・・これは、まずいな・・・・


そして、前頭に感じる、小さな手で優しく撫でられる感触。



「Zzzz...」


「ひろ君?・・・・寝ちゃった・・・」



抗えるはずもなかった。


こんなに幸福感に包まれて眠るのは何時ぶりだろうか。



「ふふ・・・好きだよ、ひろ君」




――俺の意識はしばらくの間遠くへ旅立っていった。







★★★

あとがき



読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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