23話 モテ期到来



朝登校して下駄箱を開くと、そこには一枚の手紙が置かれていた。

内容は、昼休みに体育館裏に来てほしい、というものだった。


―—ピンクの紙に可愛らしい文字で書かれていた。


「はぁ・・・・ひろ君またー?これで5回目じゃないー?」


俺の横で溜息を吐き呆れた様子の舞衣。

╮(´-ω-`)╭ヤレヤレとでも言いたげな顔で俺にそう零した。


・・・いや何で数数えてんだよ。



「えっと、この前に舞衣ちゃんがいない時を狙って告白した子がいたから+1だよ?」


呆れる舞衣に冷静に情報を付け足す萌花。

・・・は、え、あの時は誰もいなかったはず!?


「あっ!私のクラスでも裕哉のこと気になってる子がいたよっ!モテモテだね裕哉っ!」


擁護するかと思いきや追撃をしてきた沙也加。

余計な火種をばら撒きやがった。

・・・もうやめろ、致命傷だ。


俺を蚊帳の外にして、ニコニコ会話する3人。


しかしその楽し気な声色とは異なって、責めるような雰囲気を放っていた。


俺の胃がキリキリと痛みだした。






昼休み。体育館裏。



「私、裕哉君のことが・・・!!す、好きです・・・・!!」


「・・・ごめん、俺他に好きな人がいるから・・・その」


「っ!」


涙ながらに走り去る女の子。

なるべく傷つけないように断るも、そんなことは不可能だった。


俺は内心申し訳ないと思いつつ、追うことなくそれを見送った。

追うのは野暮というものだろう。



――あー!あの子は1組の!ひろ君は舞依のだよ!(@>┰<)ベーッ!!

――ひろ君は萌花のだから残念!‪( *¯ ꒳¯*)エッヘン!

――よくやった!偉いよ裕哉っ!( ๑´•ω•)۶”(ノω・。`)ヨシヨシ


そんな感傷に浸る俺の耳の届く騒がしい声。


振り返って声のする方に視線を向けると、こそこそとこちらを覗く舞依萌花沙也加。

どうやら隠れて聞いていたらしい。おい。


文句を言おうと近づくと、俺の視線に気づいた3人は「良くやった!」とこちらに親指を立てた。



「悪いのはこの頬っぺたか!」


「「ひ~!ごべんなざあい~!!」」


右手で舞依、左手で萌花の頬っぺたを抓る俺。

可愛くてもダメです。


「なんで私だけ両方なの~!!」


そして最後に沙也加の頬っぺたを両手で抓る俺。

いや、両手使えるのに片手だけだともったいないと思って。すまんな沙也加。


それに恋人には優しくするのが男ってもんだろ?

沙也加なら・・・まあ、ええやろ。沙也加だし。











――朝に手紙をもらい、昼休みには告白。それも。夏休みが明けてから1か月も経っていたい短期間で。



そう、現在俺にモテ期が到来していた。

前世ではこんなイベントは起きなかったんだけど何が原因なんだ?


教室で話しかけられることが増えたし、舞依と萌花について聞かれることも増えた。聞かれたときは正直に付き合っていると言っているが、なんかそれでも積極的に話しかけてくるようになった。



・・・・女子は誰かのものを欲しがる、という奴か?

そんな格言を昔聞いたことがあった。



そしてこのモテ期により、俺達の放課後は一層賑やかになっていた。


これまでなら舞依、萌花、沙也加の3人と帰ることが多かったが、現在では里緒菜、唯華、涼花、そして比較的学校で話す女子を含めた大所帯になっていた。


「裕哉!今日も裕哉の家でいいよね?」


「あ、うん、いいけど」


「ほんと?やったー!」


断る理由もないので素直にそう答える。

里緒奈は嬉しそうに笑った。


「えっとー大久保さん?実は、ひろ君は今日舞衣たちと用事が――「大丈夫だよ鮎川さん!皆で一緒に遊ぼうよ!」——うっ・・・ボソボソ・・・・何が大丈夫なんだよ!!こっちが大丈夫じゃないんだよー!!!」


「今日は何しよっか裕哉君!」「私裕哉君に勉強教えてもらいたい!」「あ、じゃあ私も!」「トランプ持ってきたよ!ババ抜きしよ!」「「いいね!」」「私は王様ゲームがしたい!」「王様ゲーム?」「くじ引きで王様決めて王様がなんでも命令できるゲームだよ!」「「「なんでも?!」」」



通学路の横幅いっぱいに広がる俺たち。

邪魔になっていたら申し訳ないです。


念のためあたりを確認しながら歩く。


――途中、俺たちを見て思わず二度見をする婆さんと、その婆さんに訳知り顔で頷く婆さんの姿が視界に入った。


直ぐに見なかったことにした。



女子達の中から不穏な会話が聞こえた気もするが、小学生の声は大きく皆が喋りまくっているので聞き取れないこともある。


・・・皆仲良しでいいね!(すっとぼけ)



俺含め計10人で仲良く元気に会話をしながら通学路を歩くことしばらく。



「――んじゃ、俺の部屋に先行ってて」


「「「「「わかった!」」」」」



家に到着した。


そして、俺の声を合図に慣れた様子でバタバタと部屋に向かう女子たち。

場所は勿論俺の部屋。


――最近。俺の家が女子たちのたまり場と化していた。






俺の部屋は6畳くらいで机とベット、クローゼットがある少し広めの部屋だ。

そんな部屋で小学生10人が集まれば結構手狭に感じる。



「お待たせー」


冷蔵庫にあった麦茶を入れたコップ10個と家にあったチョコレートを机に置く。

ありがとー!の声を受けながら舞依たちの隣に腰を下ろした。



「はいこれ裕哉君のコントローラーね!」


「さんきゅー」


俺のいないうちに話が進んでいたようで、ゲーム機の画面には色とりどりのキャラクターがアイテムを拾いながら一番を目指す某カーレースが映っていた。


「私は緑トカゲ!」「私は赤おじさん!」「私はキノコ!」


早い者勝ちといった勢いで皆がキャラクターを選択してく。

俺は安定のチョビ髭ガリガリノッポだ。



「――はい俺の勝ち!何で負けたか明日までに考えて来てください!」


「「「ぶーぶー」」」



何回かコースを変えながら繰り広げられた熾烈なレース。

しかしその結果は全て俺の圧勝だった。


このゲームは男なら誰もが一度はやり込むだろうメジャーなゲーム。ネット対戦のタイムアタックで鍛え上げた操縦術はそこらの女子小学生に負けるほど軟ではない!


久々の無双の快感に、つい昔の癖で煽ってしまった。

俺は悪くない。悪いのは、明らかな後出しじゃんけんでインチキして相手を煽ったあのサッカー選手だ。



楽しいカーレース。

だが、1時間くらい繰り広げられたゲームに満足したのは俺だけのようで。


続きをやろうとワクワクしていた俺からコントローラーを奪い去った女子たちの要望により、別のことをして遊ぶことになった。



「じゃーん!家で作って来たよ!」


「「「おー!!」」」



そう言って俺から宝物を奪い去った諸悪の根源である里緒奈がランドセルから取り出したのは、角柱の形で上に取り出し口のある入れ物。


ふたを開けて取り出すと、そこには普通の割り箸と一つだけ先端に赤いシールが貼ってある割り箸が入っていた。



「これから王様ゲームを始めたいと思います!」


「「「いえーい!!」」


「お、王様ゲームって・・・マジかよ」


「ちょっと大久保さん!私そんなの聞いてないけどー!?」


「王様ゲーム・・・・ブツブツ・・・・これでひろ君と・・・」


「お、王様ゲームっ?!・・・・そ、それって・・・ボソボソ・・・裕哉と・・・」


おいおいまじかよ。

こいつら・・・自分たちがこれから何するのかわかっているのか?!



強行する里緒奈に賛成の声をあげる女子5人。

勝手に進める里緒奈に抗議する舞依。

ブツブツと呟いてニヤニヤする萌花。

1人で喜怒哀楽を繰り広げる沙也加。


そこにはカオスが広がっていた。


しかし残念なことにこの世は民主主義。

民主主義とは、多数決で物事の行く末が決められる世界。つまり、俺たちが何を言おうと過半数を占める里緒奈たちの意見が可決される。



――賛成多数により、男子1人女子9人の小学生達による(ちょっとエッチな)ゲームが開始された。











★★★

あとがき


遂に始まった小学生には淫らすぎるゲーム。

裕哉は一体どうなってしまうのか!そして、女子達の企みとは!


次回!裕哉、多数の女の子と不純異性交遊?をしてしまう!?


――ヂュエルスタンバイ!





裕哉がいない時の部屋の光景


「くんくん・・・・いつものひろ君の匂い・・・」

「ふぁあああ・・・(昇天)」

「っ・・・ボソボソ・・・・ライバルがっ・・・・はやく何とかしなきゃ・・・!!」

「これが裕哉の使っているベッド・・」

「男の子の、裕哉君の部屋・・」

「これって、裕哉くんと里緒奈ちゃん達の写真だ・・・・・・いいなぁ」

「頑張って私も裕哉君に・・・!!」






読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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