裏話 女の闘い③ 舞依vs萌花vs沙也加
急遽自分達のアカウントに送られてきた1枚の写真。
そこに写るのはよく知っている一組の男女。
ただ普通と異なるのは、その男女が服をはだけさせてベッドインしているというところか。
どう見ても行為後の光景だった。
「「っ・・!!!っ・・・!!」」
2人はスマホを握りつぶす勢いで掴むと、すぐさま沙也加の家へ突撃した。
こんなことをする沙也加の意図は明白だった。
場所は移って沙也加の部屋。
ここでは現在、舞衣、萌花、沙也加の3人が険悪な空気を
そして早速待ちきれないとばかりに舞衣と萌花が机を叩き、返事を催促するように沙也加へ強く視線を送る。
「・・・で、沙也加ちゃん?この写真はどういう事?これ、ひろ君だよね?舞依の彼氏の!」
「・・・沙也加ちゃんありえないひろ君は私のものなのに勝手に手を出すなんて友達だと思っていたのにどういうつもりなの泥棒猫が」
舞衣はまだ怒りを抑え込めて冷静でいるが、萌花の方は怒りで回路がショートしていた。完全に理性を失おうとしていた。
すかさず舞衣がツッコミを入れる。
「・・・・・・・・萌花ちゃん少し落ち着いて。まずは言い訳を聞かないとだから。それに、泥棒猫なのは萌花ちゃんもだからね?」
「・・・・・・・・・・・ちっ」
女の子がするのは印象が良くない舌打ちをかます萌花。
しかし、自分と同じ立場の舞衣の言葉に落ち着きを取り戻す。
そんなやり取りを見て、沙也加はニコニコと2人を弄った。
「あははっ!何だかんだ言って2人ってやっぱり仲いいよねっ!」
「「うるさい!くそビッチ!」」
しかしその舞衣の頑張りも沙也加の発言で台無しになっていた。
―—もとはと言えばお前が原因だろうが!!!!
2人の内心は完璧に一致していた。
何なら、一発殴っても許されるよね?と本気で検討していた。
ニコニコと笑う沙也加にキレ顔の舞依と萌花。
仲良しごっこをしようとするような沙也加の態度に2人は「いい加減説明しろ」といった表情でスマホを取り出した。
しっかりと見えるように置かれた2台のスマホには・・・・ベッドで裸で眠る裕哉に裸で抱き着き嬉しそうに体を絡めた様子の沙也加が写っていた。その視線はカメラ越しで2人を見るように向けられていた。明らかに故意。よく見れば沙也加の顔は、自分の縄張りを主張するかのような、自分以外の敵を挑発するような表情が浮かんでいた。
「・・・で?何か弁明は?」
「・・・・・・」
睨みつける2人。
検討した結果、一発殴るのは確定していた。
そんな2人に一呼吸置いてから沙也加が口を開いた。
「――わ、私・・・・・・・・・んっ♪・・・ひろ君の童貞貰っちゃった♪」
「「○ねくそビッチ!!」」
沙也加の
今のはどう考えても沙也加が悪かった。
「ちょっと痛いってば2人とも!」
「「ふぅー!ふぅー!!」」
「あー!いったーい!しかも髪崩れちゃったじゃん!」
2人は恨みを込めた抓りを実行した後に、沙也加の髪をぐちゃぐちゃにした。女子には女子の嫌がることがわかるのだ。
数分後。
そこには髪がぼさぼさで服がはだけたあられもない姿の沙也加がいた。
ある程度留飲を下げた様子の2人。
しかし、このまま沙也加を懲らしめていても起こったことは戻らない。
何よりも知りたいのは沙也加の動機と弁明。
そう気づいた2人は、落ち着きを取り戻た沙也加に続きを促す。
「――はぁはぁ・・・ごめんってば!本当は寝とるつもりはなかったの!・・・ひろ君と恋人になれたらいいなぁとは思ってたけど!」
「「ひろ君なら当然!」」
沙也加の釈明に息ピッタリの2人。
沙也加がいかにくそ○ッチかもそうだが、それ以上に裕哉が最高な男の子だというのは2人にとって自明過ぎた。
「その・・・私自慢じゃないけど男の子にはモテるんだけどさ」
沙也加がポツリと話し始める。
「唐突な自慢始まったー」
「萌花はずっとひろ君一途だから萌花の勝ち」
「は?私の方が好きだけど??は?」
言い争う二人を無視して沙也加が続ける。
「でも、ひろ君は他の子と違ってぐいぐい来なかった・・・それに私に優しくしてくれて女の子扱いしてくれた」
「ひろ君だからね!」
「ひろ君を舐めないで!」
舞依と萌花が自慢げに胸を張った。
まるで裕哉の厄介オタクのようだ。
「ほら、私父親いないからさ・・・パパが居ればこんな感じかな?って最初は思ったんだけど・・・2人と仲良くしているひろ君見たら胸がきゅっとなって・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
唐突なシリアスな内容に押し黙る2人。
相手は憎いが超えてはいけないラインは理解していた。
そして、その胸がきゅっとなる感覚には自分たちも覚えがあった。
「それで、ママに相談したら・・・それは恋だって教えてくれて。でもひろ君には舞依ちゃんと萌花ちゃんがいるから無理だって思って――」
裕哉と舞衣、萌花の関係は周知の事実。
そこに割り込む余地などなかった。
事実、同級生が裕哉に告白してあっけなく振られていたのを沙也加は一番近くで見ていた。
自分が好きだからと言って相手も自分を好きだということはあまりないし、既に恋人がいるなら尚更。
多くの人はこのような時には割り切って別の人を探したり、友達のままで過ごしたりと折り合いをつける。
人はそういう経験を積んで成長していくものだ。
しかし、沙也加は違った。
「――――だからさ、彼女がいても友達として遊ぶくらいはいいよね?って思って部屋に呼んで・・・・・だけど、やっぱりひろ君と話すのは楽しくて・・・・でも私にはもうチャンスがないって思ったら・・・我慢できなくて・・・・その、気付けば家にあった睡眠薬を飲ませて一発やっちゃった!」
そう言ってあの出来事を思い出したのか幸せそうな顔をする沙也加。
最初は裕哉に対する葛藤が見えて、同じ立場なら私もそうなるなぁと同情していた2人だったが、最後の方に爆弾発言で一気に冷静になった。
す、睡眠薬?
それってレ〇プってこと?
そして、そのことを嬉しそうに恋人たちの前で語る沙也加。
そんな反省の色の見えないビッチに2人は絶句する。
こいつマジか。
倫理観とかないのか。
肯定的に捉えようとするなら、それくらいひろ君のことが好きってことだけど。
・・・・・・いやいや、普通にアウトでしょ。
確認の意味合いで舞依が客観的な事実を述べる。
「・・・・一応言うけど、それ犯罪だよ?通報していいよね?」
舞依の手には既に110と打ち込まれたスマホがあった。
「うわ?!ま、待って?!わ、私だってこれが犯罪なのはわかってるよ!で、でも!裕哉への想いを抑えられなくて!・・・・・・・・・・・だが!後悔はしてない!!」
「「・・・・・・・は?」」
やったのは犯罪行為にもかかわらず堂々と開き直る沙也加。
・・・何だこいつ無敵か?
勝手に横から出しゃばってきたと思ったら自分たちの好きな人の純潔を搔っ攫っていって・・・それを自分達の前で堂々と言い切るなんて。
・・・・・・・ムカつく
その余裕そうな顔がムカつく。
一足先に進んだっていう事実にもムカつく。
自分達だってひろ君が求めてきたら喜んで応えるのに。
そういう行為は知っていたけど流石に早いと思って待っていただけなのに。
それをこのクソビッチが・・・!!!
「一発ビンタさせてねー?」
「記憶を飛ばしてあげる」
これくらい当然。むしろ○さないだけ感謝しろ。
2人がウォーミングアップとして肩をぐるぐると回す。
「え?!あっ・・・・お、お手柔らかにっ」
幸せメス顔から一転、体を震わせながらか細い声をあげる沙也加。
もしこの場に男の子がいれば、その庇護欲あふれる可愛らしさにたちまち沙也加を庇っていたことだろう。そんな美少女声をあげる沙也加。
だが残念ながらここには女だけ。
むしろその男に媚びるような声に余計にイラっとした。
2人は頷き合うと、沙也加が動けないように体を抑える。
そして――
「「せーのっ!!」」
――バチッ!
「きゃー――――!!!!」
沙也加の両サイドから甲高い音が響き渡った。
彼女の両頬には真っ赤な紅葉が咲いていた。
「痛いーー!!ヒリヒリするーーーー!!!!」
普段誰かにビンタなどされずに育てられてきた沙也加。
その痛みにゴロゴロとカーペットの上を転がり回る。
2人はそんな転がり回る沙也加をゲシゲシと足蹴りした。
そして、2人の意識は沙也加から裕哉に移った。
―—自分たち以外の子とあんな事をしたんだから・・・・覚悟はできてるよね?ひろ君?
こんな修羅場を知らず、沙也加との行為を思い出してドーパミンがドバドバだった裕哉は急に寒気を覚えたという。
結局その日は、沙也加に対してしばらくの裕哉接近禁止令と写真の没収が命じられた。その沙汰に沙也加は文句をぶつぶつ呟くも、2人の「これ以上何かしたら○す」という眼光に降伏した。
その後、大義名分を得た舞依と萌花は嫉妬心と独占欲を今一度力強く握りしめ、裕哉の元へと向かっていった。
・・・遠慮なんてものはもうこの世に存在しない。
★★★
あとがき
ついに裕哉へ制裁が・・・!!
す、睡眠薬だ・・・と・・・?!
――は、犯罪ですよ沙也加さん?!
一方裕哉は沙也加との行為の余韻に耽っていた。
まあ・・・・沙也加は美少女で、裕哉は実質禁欲していたような状態だったので無理もない。
―—だけど、社会的に見れば裕哉が悪いんだからね??(理不尽)
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