閑話 side沙也加 恋に落ちた日と決意
私の裕哉への第一印象は、仲の良い女の子が2人いて、しかも噂では二股をしていると聞いていたので少しどんな人か気になる程度だった。私は転校してきたばかりなのもあって新しい環境に馴染むのに必死だったので、次第に記憶から薄れていった。
だけど、たまたま学校での出来事をママに話しているときに裕哉の話題が出た。その時はただの二股している男のがいる、という話だったけど。
オラオラ系のヤンチャな子なのかな?
私は前の学校で男の子にモテたせいで女子からハブられていた経験があった。もし裕哉と仲良くなればまた繰り返しになるかもしれない。
そう思っていたら・・・・何故か裕哉たち3人と登校することになった。
「沙也加?考えてみて?女友達ができるいい機会じゃない?」
「でも・・・・また惚れさせちゃうかも・・・・」
他の人に言えば間違いなく自意識過剰な言葉。
だけど、それを経験してきた私にとっては重要なことだった。
「そうね、確かにそうかもね・・・・・・じゃあ友達は作らない?ずっと男の子とだけ行動するの?」
「そ、それはっ・・・・」
学校は何かと男女で別れることが多い。
そんな中、異性の友人しかいないのは現実的ではない。
それに、異性の友人だけだと女子たちから恨まれる原因になるのは経験済みだった。
「もちろん、ママがその子たちを選んだのは理由があるのよ?」
「理由?どんな?」
ママが言うには、男の子である裕哉君と女の子の舞衣ちゃんは恋人同士の関係で学校でも授業中にイチャイチャして先生に注意されるほどなのだとか。・・・・ええぇ、恥ずかしくないのかな?
そして、もう一人の女の子の萌花ちゃんも裕哉君のことが好きで、学校で裕哉君にストーキングしていると言われてる。すでに告白もしたけど舞衣ちゃんがいるから、と何度も振られているらしい。・・・その子も凄いね?
「それでママは何が言いたいの?」
トンデモ情報にママを急かしてしまった。
ママが言いたかったのは、舞衣ちゃんも萌花ちゃんも学内でも可愛い女の子だけど、裕也君は舞衣ちゃんと付き合って萌花ちゃんのアプローチは断っていた。つまり―—
「——裕哉君は舞衣ちゃん一途だから、そこに沙也加が入っても前みたいにはならないでしょ?」
そういう事だった。
既に恋人関係でかつ浮気の心配のないところに入れば、私は女友達が出来て安心だし、女子は自分の気になる男の子と仲良くするだろう私を心配しなくて済む。
そう考えれば凄くいい気がしてきた。
「それでも男の子に好意を寄せられたら・・・・裕也君と舞衣ちゃんに事情を説明して、沙也加も萌花ちゃんと一緒で裕哉君に好意を持ってるってことにしてもらえば安心よ」
「どうかしら?いい考えでしょ?」
私はママの考えに賛成して、3人と一緒に行動するようになった。
内心三角関係?でギスギスしてたり、やっぱり裕哉に好意を持たれてしまうんじゃないかって不安になってたけど・・・・話してみると全然そんなことはなく、居心地が良かった。・・・・・|3人の距離が近いのは気になったけどねっ!あれ?!萌花ちゃんとも付き合ってるのっ?!
ちょっと想定外のことがあったりしたけど・・・・それでも、3人のおかげで楽しく生活できるようになった。
クラスでは男女関係なく友達ができた。
女子とはおしゃれについて話したり、男子とは外でドッジボールをして遊んだりした。・・・・私はお喋りよりも体を動かす方が好きなんだよねっ・・・そのせいで男子と関わる機会が多かったのも前の学校でモテてしまった原因だと思う。
―—告白されたときはしっかり「裕哉君が好きだから」と断るようにした。その時男の子達が「「「またあいつかよ!ぶっ飛ばす!」」」と走っていった時は慌てたけど、少し大人っぽい裕哉君が言葉と体でやっつけていたので素直にすごいと思った。
そんな感じで、学校ではみんなと楽しく、放課後は裕哉たちと一緒に遊ぶようになった私の学校生活は充実していた。ママもそんな私を見て嬉しそうにしていた。
・・・そのはずだったのに。
きっかけは自分でもわからない。
困っていたところを優しく助けてもらったとか、目の前でイチャイチャする3人を見て興味を持ったとか・・・・・わからない。
だけど私は・・・・・いつの間にか裕哉を目で追うようになった。
裕哉と舞衣ちゃん、萌花ちゃんが陰でイチャイチャするのも盗み見るようになったし、裕也の相手を自分に置き換えて妄想するようにもなった。
そして、これまでは気にしていなかった裕哉からの視線も気になりようになって、自分磨きをするようになったり、少女漫画やママが買う女性誌なんかも見るようになった。
・・・・今思えばその時にはもう好きになっていたのかもしれない。だけど、好意を向けられたことはあっても向けたことのない私にはわからなかった。ただ、自身が成長して異性相手に気遣うようになったと思っていた。
ママはたぶん私が持つ好意に気づいていたと思う。
急に「オシャレは大事よ!」と言い出して、私のお小遣いが増えたから。
私は頑張ってオシャレの勉強して、女子たちからも褒められるようになった。
そして・・・・裕哉に褒められた時、向こうはお世辞だったのかもしれないけど・・・・・・私にとっては、比べ物にならないほど嬉しかった。
夏休みになると地域の祭りで裕哉と一緒に演奏することになり、舞衣ちゃんと萌花ちゃん抜きの2人っきりで会うようになった。
私が転びそうになるハプニングがあったけど、裕也が支えてくれたおかげで怪我はなかった。・・・・だけどそのせいで、抱きしめられた時の幸福感と、私に触れて顔を赤くする裕哉を見てすごく嬉しかった。
調子に乗って裕哉にちょっかいをかけてしまって、お爺さんに怒られるまで裕哉とイチャイチャした。たぶんニヤニヤが抑えられなかったと思う。今でも夢に見てしまうくらいだもん。
祭り当日は私の浴衣姿に見惚れていたし、綺麗だと言ってもらえた。
お母さんと一緒に準備を頑張った甲斐があった。裕哉も凄くかっこよかったなぁ・・・
屋台でキーホルダーを取ってもらった。
裕哉とペアのキーホルダーは今もランドセルに付けている。
自分の部屋でそれを眺めるのが結構好きなんだよね。
演奏も2人で練習の成果を発揮してうまくいった。
真剣な様子の裕哉も凄くかっこよかった。
舞衣ちゃんと萌花ちゃんの演奏中に私と裕哉は蹴り合いに夢中になったせいで見逃してしまい、裕哉は2人に怒られていた。・・・えへへっ
・・・・それを見てなんだか気分が良くなったのを覚えている。
そんな風に楽しく過ごせていた夏祭りは・・・・
『舞依・・・好きだよ・・・・これからもよろしくね』
『ひろ君・・・うん!私も大好きだよ!これからも仲良くしてね!』
『・・・萌花・・・俺、萌花のことが・・・好きだ・・・・よかったら恋人になってほしい』
『・・・・・・!!グスッ・・はい!喜んで!』
最後の最後で私の心を砕き散らした。
私の前でキスを交わす3人。花火を背景にしたその様子は幸せに包まれていて、すごく絵になっていた。
・・・・そこに私の居場所はなかった。
あれ、何でこんなに胸が苦しいんだろう?
なんで・・・なんで・・・・・なんで私はここにいて、2人は裕哉とキスを・・・・・なんで・・・・なんで2人は良くて私はダメなのっ・・・?
―—私だって裕哉とキスしたいのにっ!
「・・・・私っ・・・そっか、そうだったんだっ・・・」
「私っ・・・裕哉が好きなんだっ・・・・」
私はようやく自分の気持ちに気づいた。
そっか、私は・・・・・
溢れ出そうになる涙を抑えるのに必死でこれ以上考えるのはやめた。
・・・あーあ、明日は目が腫れちゃうなぁ・・・・
1人花火を抜け出して家へと歩く。
だけど、私は・・・・・・・
落ち着いたところで私は・・・自分のために友達2人を裏切ることを決めた。
「・・・・うん、決めたっ!・・・・・・恥ずかしいけど・・・男の子が喜ぶことをママに相談して・・・・そして・・・・!! 舞依ちゃん、萌花ちゃんがいようと関係ないっ!私は裕哉が好き!・・・・私が裕哉の一番になってやるんだからっ!」
裕哉が私を女の子として意識しているのはわかっていた。まだ諦めるのは早い。
―—なら、私は余裕ぶっている2人よりも先に女の武器を使って裕哉を落としてやるっ!
私は零れた涙を拭ってから、ママに協力をお願いするべく家へと走った。
★★★
あとがき
遅ばせながら沙也加side回でした。
沙也加ちゃん・・・・
今作初のシリアス回?のような気がします。
そしてこれから沙也加ちゃんは積極的になり・・・・・のちにある事件を起こします。
読了感謝です!
もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!
また、コメント等もモチベーションが上がります!
今後ともよろしくお願いします!
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