裏話 女の闘い① 舞依vs萌花
side舞依
私とひろ君が幸せな時間を過ごしているとき、アイツ――
しかし、気がつくと、彼女はひろ君に付きまとい始め、ひろ君もそれを拒否しなかったため、私たちが遊んでいる時にも平然と加わるようになっていた。私の心中は複雑だ。
ひろ君は本当に優しくてモテる。長年彼と一緒にいる私には、そんなことはよくわかっている。学校でも、彼の下駄箱にはラブレターが忍ばせられているのを見たことがある。返事のために体育館に行くと、「好きな人がいるから」と断る姿を見ても、その好きな人が私だと知っている。
これは自信過剰でも勘違いでもなく、事実なのだ。男子たちとの恋バナでは、ひろ君が好きな人のイニシャルが私と一致しているし、授業中に私が手を振ると、真っ赤になって目を逸らしていた。私がホットパンツを履いた日の視線も、バレないようにチラチラと感じていた。
だけど、そんな確信を持ちながらも、振られる可能性がわずか0.00001%でもあるのなら、その一歩を踏み出す勇気がなかなか出せない。今の関係が無くなるくらいなら、このままがいいと思ってしまうのだ。
――そんな私の苦悩は、ある日突然解決された。お互いに一歩を踏み出せずにいたその日、ひろ君が突然告白してきた。そして、彼は私にキスをした。
…えっ?舌…?! ちょっと、ひゃっ……ひろ君!?!?
流石に文句を言ったけれど、いきなりこんな場所でキスなんて!誰が見ているかわからないのに、どうしてこんなことをするの!?
…まあ、嫌とは言っていないけれど。
あのままの関係も悪くはなかったけれど、恋人同士になった方が嬉しいに決まっている。やっとひろ君も勇気を出して告白してくれたし、それに好きな人とキスまでしちゃったのだから、嬉しくないわけがない。
これから二人で色んなことをしたいなぁ…もちろん、エッチなことも、ひろ君なら…。
――そんな幸せなことを考えていると、目の前でアイツがひろ君に告白し、私にしたのと同じキスをしているのを見てしまった。
……あの雌犬。ぶち殺す。
☆☆☆
side萌花
萌花がひろ君と知り合ったとき、既にアイツ――
しかし、アイツは萌花がひろ君と遊ぶときには必ず一緒にいて、ひろ君もそれが当たり前のように受け入れているため、萌花は聞くことができなかった。ひろ君は優しいし、モテる。それを一番知っているのは萌花だ。彼女がひろ君を好きになったのも、その優しさに触れたからだ。
しかし、彼には既に他に好きな人がいて、それがアイツだということも知っていた。悔しいけれど、その事実を受け入れるしかなかった。
ひろ君はよく女の子と話しているが、特にアイツに向ける視線は優しく、授業中にイチャイチャしている姿も目撃したことがある。そのときのひろ君の視線は誰よりもアイツに向けられていた。
だけど、まだ二人は恋人同士ではないから、萌花が一緒にいても問題ないと思っていた。ひろ君が見ていないところでアイツに睨まれることがあっても、ひろ君と一緒にいられることには変えられない。ひろ君の一番はアイツだということを一番理解していたから、萌花は近づきすぎないように遠くから眺め、学校で時々声をかけ、放課後は一緒に遊ぶ程度にしていた。
――そんな萌花の想定は、ある日突然崩れた。いつも通りの朝、ひろ君とアイツを視界に入れて歩いていると、突然ひろ君が告白し、アイツがそれを受け入れ、二人はそのままキスを交わしたのだ。
その瞬間、萌花の心は嫉妬心でいっぱいになった。もう一生ひろ君とはそういう関係にはなれないと、突きつけられたのだから。無理だとは思っていても、可能性が0.00001%あるのとないのでは希望が全く違った。
……アイツが萌花の視線に気づき、わざと見せつけるようにキスをするのは辛かった。
前にひろ君に告白して振られたことはあった。
だから、その時に諦めなかった萌花が悪いと言われれば確かにその通り。
他の人からすれば、萌花がひろ君への想いを引きずっているということになるのもわかっている。
しかし、恋愛というのは感情のものであり、萌花にはどうしようもなかった。
・・・・私だって、ひろ君とあんなことをしてみたかった。
――ひろ君が求めてくれるならどんなことでもしてあげたいのに。
そんなことを考えていた萌花は、今日はかくれんぼをやると知った。
それと同時に、今朝の光景がフラッシュバックしてしまい・・・・感情を抑えきれずにダメもとである仕掛けを施した。
バレたら大変なことになる。
それはわかっていた。だけど・・・・頭からあの光景が離れない。
これでだめなら・・・・・・・・・・。
そんな思いで挑んだかくれんぼ。
結果として作戦は運良く上手くいき、ひろ君と二人だけの空間を作り出すことができた。
自分の横で楽しそうに笑うひろ君。
やっぱり萌花はひろ君が好き・・・・誰にも渡したくない・・・・!!
そんな状況では、抑えていた感情が溢れ出てしまう。
萌花は、自分勝手な思いを叫んでから、強引にひろ君にキスをした。
・・・ひろ君は、そんな私を受け入れてくれた。
感じたことの無い幸福感だった。萌花はもうひろ君からは離れられないと悟った。
そして、ひろ君の方も萌花との行為に興奮しているのが伝わって来た。私だけの方想いじゃなかったんだ・・・!!
想いを込めるように舌を絡める。
今朝のキス上書きするように。
ふいに・・・・視線を感じたので入口を見る。
――アイツが私を鬼の様に睨んでいた。
ひろ君に恋人がいようと関係ない。
ひろ君は私のものだよ。
――アイツに見せつけるように、キスをした。
★★★
あとがき
次回!舞依が萌花を呼び出してオ・ハ・ナ・シを決行!お楽しみに!(不謹慎)
読了感謝です!
もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!
また、コメント等もモチベーションが上がります!
今後ともよろしくお願いします!
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