4話 ストーカー少女

久しぶりの小学生生活を満喫した後の掃除の時間。

クラス内で割り振られた役割ごとに教室、廊下、体育館などと分担して掃除を行うが、主目的は他のクラスの友人と駄弁る時間だ。


そんな中、俺は友人と話しながら、割り振られた教室でせっせと机を前に片づけていると、後ろから服を摘ままれるのを感じた。


それと同時に、同じ掃除班の女子たちがざわざわしているのが伝わってきた。


耳を澄ましてみると、「またいるよ」「ストーカー?」「いつも裕哉君の後ろにいるよね」といった声が聞こえてくる。


その会話でピンときた。

こんな事をするのは彼女しかいない、と。



「ほ、萌花か?どうしたんだ?」


「んん・・・手伝う」


「そっか、ありがと」



彼女の名前は賀谷萌花かがやほのか

舞依と同様に俺の近所に住む同級生の1人で、綺麗な黒髪ポニーテールのゴスロリと言うかお嬢様系の顔立ちをした美少女だ。


そして何故か俺のストーキングをするのが趣味?な美少女で、それを知っている学年中からヤバイ奴扱いされている。


会えば普通に話すし近所付き合いもあるのでわざわざストーキングする必要が無いと思うのだが・・・・何かと俺の近くに居ようとする子だ。



「今日は一緒に帰る?」


「・・・舞依ちゃんも?」


「え、うん、そうだけど」


「やめとく」



その割にはこうして一緒の帰りを断ることが多い。


反応的に舞依のことが嫌いなのかな?とも思ったが、2人でいるところも見たことあるし、普段は放課後に俺と舞依と萌花の3人で一緒に遊んでいるんだけど喧嘩したりすることもないから仲が悪いってことはないと思いたい・・・


「そっか・・・じゃあ後で家に行くね」


「うん・・待ってる」


掃除を終わらせてすぐに萌花は戻っていった。


その後、クラスメイトから萌花について心配されるが、友達だから大丈夫だよと誤解を解く。


俺としては萌花はちょっとコミュ障なだけだと思うんだけど、一度貼られたレッテルは上書きするのは難しいし、それに萌花自体特に気にした様子もなく注意しようとした際に気にしなくていいと言われたから誤解が解けてないんだよね。


流石に虐めとかになったら何とかしたいけど、どちらかと言うと珍獣を見るような雰囲気な気がする。まあ確かに変わった子ではあると思う。俺だってよくわかってないし。


だけど俺は、彼女が俺を好いていることを知っている。

これは前世の記憶もそうだが、何度も彼女に告白されているからだ。・・・月に一回くらい?


その際は、俺は舞依が好きだったこともあってか素っ気なく振っていた。舞依に勘違いされたくなかったし、それに毎度の事なので振るのに慣れていたといってもよい。



だけど彼女が諦めてる様子はない。


前世では途中で嫌になって萌花を避けるようになったんだよな・・・それで中学に上がるときに萌花は公立ではなく私立の学校に行ってしまった。


俺が好きなのは舞依だけど、別に萌花のことが嫌いなわけじゃない・・・むしろ女の子の中では好きな方だ。


だけど当時はそれを上手く伝えることが出来なくて・・・そのまま卒業。以降一度も会う事が無かった。


だから、できれば仲良くしたいと思ってる。


・・・え?舞依がいるだろって?

それは、舞依は恋人だけど、萌花は友達だから大丈夫なはず。舞依と萌花も仲いいと思うし。



・・・そ、それに、好意を無碍にするのは良くないと思うんだ。いや別に舞依と言う恋人が居ながら他の女の子と関係を持ちたいとかそんな理由ではないよ???(早口)。













舞依と帰宅後、ランドセルを置いてから俺はさっそく萌花の家に向かった。


今日は先に言っていたように俺と舞依と萌花で遊ぶのだ。場所は家が広く遊ぶのに十分な広さの庭がある萌花の家。3人で遊ぶようになってかれこれ1,2年は経っていると思う。


いつものように門を開けて庭に向かうと、既に舞依と萌花が座って待っていた。


「おいっすー」


「あ、ひろ君来た!今日は何するー?」


「萌花はかくれんぼがいい!」


「「賛成!」」


上から俺、舞依、萌花となっている。

意外に思うかもしれないが、学校ではコミュ障系の萌花は、この3人で遊ぶときはむしろ元気系だったりする。

俺としてはこれが素なのはわかっているので、学校の時の方に違和感があるのだが。


まあ、今はその事は置いといて、全力でかくれんぼしますか!


じゃんけんの結果舞依が鬼になったので、100秒数える間に俺と萌花は隠れ場所を探す。



「ひろ君、あの中入ろう!」


「お、木箱か!いいね!まさかこの中に隠れてるとは思わないでしょ!」


萌花の見つけた木箱のふたを開けると、俺たち2人が丁度入れるくらいのスペースがあった。


中は少し汚れていて木材も匂うが、むしろこういうのが楽しいんだよなぁ、冒険みたいで。



「よし、次いいよ!」


「うん・・・きゃっ!」


「おっと!萌花、大丈夫?」


「う、うん・・・ありがと」


先に中に入って萌花に手を伸ばしたところで萌花が体勢を崩したので、俺は萌花抱きとめゆっくり床に降ろした。


ケガは大丈夫そうだったので、肩を寄せ合うように詰めて座ってからふたを閉める。一応窒息が怖いので隙間は空けているが隙間は特に目立ってはいないのでokだ。


室内には、ほぼ密封で狭いためか木材の独特な香りもそうなのだが・・・・・・すぐそばの萌花から良い匂いがする。


バレないように嗅いでしまうのは男の性だと思いたい。俺が変態だからではないはず。


僅かに邪な感情が出てくるが、舞依を思い出すことでしっかり自制する。


いくら狭い密室で俺のことが好きな美少女と二人っきりでしかも隣から女の子のいい匂いがするからといって変なことをしてはいけない!耐えるんだ俺!



俺と萌花はお互い体をくっ付けた状態で、見つからないようにそっと息をひそめた。


「――99!100!」


「ひろ君と萌花ちゃんどこにいるかなー???」


そして100秒が経ってから、舞依による捜索が始まった。



「あれー?おーい!!」


しかし、萌花の選んだ木箱の中という予想外の隠れ場所が優秀だった。舞依は、俺たちをなかなか見つけられないでいた。


俺と萌花はしばらくじっとしていたが見つかりそうにないとわかったので、気を緩め、それからは自然と雑談の時間になっていった。



そして話し始めてから5分ほどが経過したとき。



「・・・ところでひろ君。今日、舞依ちゃんとキスしたって本当?」



萌花が心なしか悲しそうな雰囲気でそう尋ねてきた。


――俺の心臓が、とんでもない勢いで跳ねたのがわかった。







★★★

あとがき



読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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