第13話
だから、違うって。
今のはナシ!
あんな、顔で笑う百田が悪い!
頭に降りかかった砂を払いながら、必死に心の中で叫ぶ。
「……大丈夫か?」
黙ったままの私に百田の訝しげな声音。
「別にっ、大丈夫やし」
わ、ヤバ。起こしてもらったお礼も言わんと愛想悪いよ私!
でも、今は無理。
顔上げられん。
自分でも分かる。
今、顔すっごく赤い気がする。
百田には絶対見られたくない顔しとる。
やばいやばいやばい。
早く離れんと、本当にやばい気がする。
「あ!くっそ、マジか!」
頭上で悔しがる百田の声と、周りの歓声を聞いて顔を上げた。
「あ……勝ったんや」
1位でテープを切ったらしいうちのクラスのアンカーが飛び上がって喜んでるのが見えた。
「あー、負けた。お前らのクラスすっげーな」
百田の声に迂闊にも百田を見てしまった私。
負けたって言いながらもなんだか楽しそうに笑う百田が見えて……。
「百田、ずるい……」
私の小さな呟きは百田には届かなかった。
でも、その方がいい。
知られたくなかったから。
私が百田に恋におちたこと。
恋に疎い、ガキな百田。
今知られたって私の恋は失恋一路だ。
だから、まだいい。
今は黙っていよう。
fin
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