第35話

「雛にそんな誤解させてたなんて」



「誤解?」



苦しそうな成くんの表情に胸が痛い。



「俺、ちゃんと雛の事好きだからね」



「成くん…」



「好きだから、我慢できなくなる事もあるんだ」



ん?どういう意味?



涙は相変わらず止まってくれなかった。



もう一度袖口で擦りながら、成くんの言葉の意味を一生懸命考えた。



好きだから?我慢できない事?



「ね、成くん…一体なにを我慢してたの?」



もういっそはっきり言って欲しかった。



成くんは誤解だといったけど、私がどう誤解しているのかさっぱり分からない。



成くんはといえば、さっきまでまっすぐ見ていた私から視線を逸らし、



うー、なんて唸ってる。



逆に私はさっきまで目を合わせるのすら怖かったのが嘘みたいに、彼から目が離せない。



じっと見詰めてしまう。



「雛、もう勘弁して」



片手で顔を隠してしまい、あっさりギブアップしてしまう彼に困惑するしかなくて。

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