第20話

引き戸にかけた指にほんの少し力を入れた次の瞬間。



成くんと女子の会話が聞こえた。



「よく我慢してたよね」



「我慢ってわけでもないけど」



「真面目そうっていうか、固そうだもんね」

 


「先輩、」



諌めるような成くんの声が聞こえる。



「あはは、ゴメンゴメン」



「からかわないでくださいよ」



どうやら会話の相手は3年の先輩だというのは分かった。



でも、この内容ってなに?



我慢って?



固そうって?



頭の中が混乱してきた。



成くんはこの先輩となにを話しているの?



引き戸に当てていた指から力が抜けた。



「もぉ、成ってば可愛すぎ!」



ドサッという音の直後に、多分先輩の口から零れたと思われる甘い声が聞こえた。



「ちょ…!先輩!?」



成くんの慌てた様子の声。

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