第16話

「朝は悪かったな」



謝られるとは思わなくて、驚いて彼を振り返った。



「べつに…」



「考えてみれば1年も付き合ってんだもんなお前ら」



新谷くんがなにを言いたいのか分からなかった。



だからべつにその言葉の続きを待つ必要もなかったのに。



喋っている最中に背中を向けるのは失礼な気がして、立ち止まって彼の方をじっと見た。




「でも、あそこは止めとけ?意外に来客が来るんだぜ?」



「は?」



更に意味不明。



この人はなにが言いたいんだろう?



首を傾げてしまう。



「あれ?お前らあそこで待ち合わせしてるんだろ?」



私の表情から話が通じてないと察したのか、新谷くんはさらに言葉を続けていく。



「さっき、大木が体育倉庫に入っていくのを見かけたけど?」



体育倉庫?



「部活の後の片付けでいたんじゃないの?」



「違う、旧校舎横の今はほとんど遣われてない方」



新谷くんは窓から旧校舎を指差して、その奥に隠れるようにして建つプレハブの建物を示した。

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