第6話

「こんな所でそんなもん読んでりゃ目に入ってもしょうがないだろ、」



明らかに非はこちらにあると言いたげな声の響き。



「勝手に見るなんて常識ないっていうか、嫌らしい」



キッパリと撥ね付けるように言いはなつ。



「嫌らしい……って」



唖然とした表情が、見る間に不機嫌に変わる。



「なんだよ、見たくて見たんじゃねーし」



プイッと顔を背けた男子高生にもうひと睨みしてから、私も彼から顔を背け後ろの車窓から外を眺めた。



車窓に映る景色を見ながら、ふと気付く。



窓に映った車内が見えた。



扉の前に立ち、私が腰掛ける席の手すりに背もたれるようにして立つ男子高生の顔も、はっきり見えた。



酷く傷ついた表情をしていた。



意外に長い睫毛が目元に影を作っている。



突き出された唇は上下共に薄かった。



ちょっと、言い過ぎたかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る