第7話

そんなに落ち込むとか思わないし、本を盗み見されて恥ずかしい思いをしたのはこっちだし。



つい見えてしまった男子高生の顔に、言い様のない罪悪感が生まれる。



今さら謝るのもおかしいし……。


つい気になって車窓ごしにその男子高生を見ていた私は、不意に彼と目が合ってしまった。



やば……。



わざとじゃないけど、これも盗み見って言うのかしら?



慌てて視線を逸らして俯く。



「……おい、」



声の持ち主は間違いなく、その彼のものだった。



今の盗み見に対して文句を言われるのが分かって、なかなか顔を上げられなかった。



「おいってば……」



再度響いた声と被るように車内アナウンスが流れた。



あ、降りる駅だ。



このまま無視して降りてしまえばいい。



そう思って、駅に着く迄の数分間私は貝のように黙り込んで顔を伏せていた。

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