第5話
毎日本を読んでいる事もあって、私の字を読むスピードは早い方だ。
15分も読んでいれば、この小説の盛り上がりの部分に突入する。
今日も、『きゃー』だの『めっちゃドキドキするっ』なんぞ心の中で叫んでいた時、
不意に「ありえねえだろ!!!」と憤慨する様子の声が頭上で響いた。
盛り上がるシーンの真っ最中に響いた無粋な声。
一気に下がってしまったテンション。
誰の声よ?
本を開いたまま、顔を上げた。
「あ、やべ……」
顔を上げた私の視界に飛び込んできたのは、ひとりの男子高校生だった。
確かうちの高校の2駅先の進学校の制服を着ていた。
その男子高生は、悪戯を見つかった子供のように口元を歪ませ、視線をサッと逸らした。
明らかに私を、もとい私が読んでいた本を見ていたのは一目瞭然だ。
私は慌てて本を鞄の中にしまった。
見られていた?……っていうか読まれていた?
人が読んでいる新聞を盗み見するおじさんがいるのはよく見るけれど。
女子高生の、しかも恋愛小説を盗み見する男子高生って!
「最低」
ボソッと吐き捨てるように呟く。
すると、心外だと言わんばかりにその男子高生の目が私を睨んだ。
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