第4話

今日はこれ。



電車に乗り込むと入り口のすぐそばの3人がけの席に座って、鞄から本を取り出した。



携帯小説から書籍化されたこの本は、簡単にいってしまえば、中・高生向けの恋愛小説。



現実ではあり得ない、イケメンな男の子がひとりの女の子に、これまた現実味のない甘い言葉を並べあげ、さらに現実ではあり得ないアクシデントの中でふたりの恋を成就させていくという王道もの。


この現実感ありありな通学路を、無心に過ごすためには少し位、非現実感があった方が没頭しやすいと思った。



事実、この手の本に『きゃー』だの『キュンキュンする』とかやってると多少周囲がうるさくても、気に入らない匂いが立ち込めていようと気にせず有意義な20分間を過ごせることは実証済みだ。



扉が閉まる音がして、ガタンガタンと電車ガ揺れ始めれば、私の読書タイムのスタートだ。










でも、この日は少しいつもと違っていた。

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