第2話

「君には悪いと思ってる」



「……、」



「ただ、彼女には僕じゃなきゃダメなんだ」



「……、」



私とは目を合わさず、空になったコーヒーカップの取っ手を弄るから、静かな店内にカチャカチャと嫌な金属音が響いていた。



「……、クリームソーダのアイス溶けちゃったな、」



ぼんやりと、呟くように言った私の目の前に置かれていたのは、大好きなクリームソーダ。



子供の頃から、メロンソーダとバニラアイスのcombinationが大好きで、喫茶店と称するお店に入ると必ず頼んでいる。



もちろん、彼もその事は知っているから、私がなにも言わなくても頼んでくれるのを見て幸せな気持ちになったものだ。



そんな大好きなクリームソーダを目の前に、別れ話をした彼を。



私は、恨めしく思った。








クリームソーダを、



大嫌いになりそうだ。






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