第29話

「過去にはそんな風に考えていたこともあったかもねー。


でも、今は翔大LOVE。」



過去にはって、ほんの数ヶ月前だからね!聞いたのは。


それがなんで、昨日の敵は今日の恋する相手……みたいな事になっちゃってるの?


いや、まぁそれはいい。


人の好みをとやかく言う権利は私にはない。


問題はそこじゃない。


問題は……。



「ねぇ、楓」



「んー?」



「楓、伊吹くんの事はどう思ってるの?」



キョトンとした瞳の楓が、私を見ながら首を傾げている。



「伊吹?」



「いや、女嫌いの伊吹くんが随分懐いてるじゃない?だから楓は伊吹くんが好きなのかなって思ってたからね。」



本当は逆。伊吹が楓を好きなんだよね。



「伊吹は弟みたいなもんだよ。うちの次男坊に似てるんだよねー。あの生意気で可愛げないトコ」



伊吹のことを『生意気』だとか『可愛げないとか言うのは、きっと楓だけだよ。

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