第25話

「……知らない。伊吹が誰を好きかなんて知らないよ」



「そ、そうだよね。男子はあんまりそういうの男同士で話さないよね」



数歩後退り、小林の視線から逃げる様に彼に背を向ける。


小林が不機嫌な理由が、分からなかった。


今迄、私が知る限り小林がこんな風に怒りを露わにしたことなんてない。


伊吹への想いに気付かされたと同時に、初めて見る小林の様子に私は混乱していた。


だから、一刻も早くこの場を離れたかった。


今、この混乱した状態で小林の傍にいることが不安で仕方なかった。


だから、小林が私を呼ぶ声を無視して、一方的に彼に別れを告げその場を全速力で走り去った。

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