第24話

「だから……伊吹くんは楓の事が好きなのかなって」



小林の袖を離して、視線を落とした。



「なんで、そんな風に思うんだ?」



「楓から聞いたの。伊吹くんに好きなコがいるって。伊吹くんがクリパに出るのも告白目当てだろうって言ってたから……」



「それ、妃奈的に重要な事?」



「小林?」



「伊吹が誰を好きか、妃奈は気になるんだ?」



責める様な口調。


自分から開けた距離を、今度は小林から詰められた。



「き、気になるでしょ?普通だよ。クラスメイトでしかも、女嫌いな伊吹くんが好きなコだよ?知りたいって思わない?」



「ただの興味本位?」



小林の真剣な顔が怖くて、一歩詰められるごとに、一歩後ずさった。



「そう……だよ」



そう……興味本位。


だけど、それだけじゃないって、さっきの胸の奥、締め付けられるように苦しかったあの感覚が教えている。


私は、伊吹が気になるんだ。


今迄遠巻きに見ていた彼との距離が、今日凄く近づいて嬉しくて。


だけど、突き放された今、凄く傷ついてる。


どうでもいい相手にここ迄傷ついたりしないもの。

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