第22話

「お待たせ……てか、お前ら場所変えるならメール位してけよ」



両手にドーナツの袋を提げた小林が戻ってきた。



「遅いよ、寒いから早く帰ろう」



伊吹から顔を背けて、小林のコートの袖を引っ張った。



「あ、え?おい、妃奈?」



不機嫌に先を行く私の背中に小林が何度も呼びかけるけど、私はそれに応えずひたすら前に進んだ。


今迄だって、伊吹は楓以外の女子に歩み寄ろうとはしなかった。


楓とは、普通にいや、友好的に話をして楽しそうなのに。


他の……私を含めた他の女子とは分かりあいたいとも思ってくれないんだ。


楓ばっかり……。



あれ?嘘……もしかして?



ふと浮かんだ自分の考えに、まさかという思い。



クルリ、踵を返し小林の姿を認め、伊吹がいないことに少し落ち込みながら口を開いた。

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