第5話

入学式で見た彼を、もう一度見ようとその当日彼のクラスを入れ替わり立ち替わり女子が覗きに行ったらしい。それこそ、同級も先輩も。


名前を呼ばれた伊吹は、あろうことかその全てを無視した。


いや、初めの数回は返事を返しただろう。


だけど、何度となく名前を呼ばれ、返す度に悲鳴が上がり逃げて行ったり女同士で盛り上がったりを繰り返せば、幾ら人が良くても腹もたつし、呆れもするだろう。


中学時代も同じものだったろうに、意外なことにそれに対する免疫が皆無だった彼は高校に入学したその日に女嫌いになってしまったらしい。


なんか、面倒くさい話。


まぁ、でも愛想が悪いのは女子限定。


男子に対しては、頗る機嫌も愛想もいい。


『バラ』じゃないのかと噂が立つ位に。


男でもうっかり恋に落ちそうなスマイルを、惜しげも無く振りまくから、彼の笑顔は男子の間では『デススマイル』と呼ばれているらしい。


そんな伊吹と同じクラスになった時も、私的には面倒に関わりたくなくて伊吹自身に関わることは皆無だった。

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