第3話

すっかり暗くなった空。




でも、温泉街ということもあり、道なりに並ぶ居酒屋の外灯や、旅館やホテルから放たれる光で道は十分明るかった。




クーラーの効いた店内から湿度と気温の高い外に出た私の気分は、少し茹だってしまった。




アパート迄の30分は、酔い醒ましには丁度いい。



23歳を機に、アパートで独り暮らしを始めた。




新築の2階建て、1DKで5万5千円。




高所恐怖症の自分には、2階建ての高さが限度だったから。




それに、DKが5.5畳と広いのも好みだった。




7センチヒールのウエッジサンダルがカツカツと、夜道に響く。




時おりすれ違う、人混みの会話に消されながらも、ヒールの音は不規則なリズムを刻んだ。




……やっぱり、酔ってるな私。




普段と違う気持ちの昂りが、変に心地好かった。

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