第7話

「相変わらずですなー。ま、そういうツンなところも好きだぜ、とまこ」



半分茶化しているような茂木くんの態度にとまこの眉根が寄る。


以前から茂木くんのとまこへのストレートな愛情表現は周知の事実で。


クラスメイト達からすれば、今さら感は否めない。だからとまこが目くじらをたてるほどの事でもないのだけど。



「黎大、お前と違って吉田さんには常識的に羞恥心があるんだから、少しは気遣ってあげな」



茂木くんの後ろからスッと現れた声の持ち主に、ピクンと肩が揺れる。


出た。


勿論、出たのは心霊の類ではなくれっきとした人間なのだけど……。



「あ、山田さんまで嫌そうな顔するなよー」



茂木くんの情けない声音に慌ててかぶりを振った。



「嫌そうだなんて、違いますよ」



茂木くんに対して思ってはいないんです。と、はっきり言うのは躊躇われた。


だとしたら、誰に対してそうしてしまったのか分かってしまう。



「違うよな、茂木じゃなくて俺の事が嫌なんだもんな?」



わざわざ突っ込まなくてもいいのに。気付かないで鈍感なふりしてくれればいいのに。


だから頭のいい人って苦手だ。


あっさり見抜いて意地悪気な視線を向けたこの人は、遊佐くん。遊佐 希一(ゆさ きいち)くん。

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