第3話
同じ学校の制服を着ているけれど、覚えのない顔だった。
そりゃあ、全校生徒500人近くの顔を、特に女子の顔をそんなに覚えているわけではないけれど……。
両サイドに結われた髪はべっとりと頬に張りつき、制服はドロドロ。
どうやったらここまで汚れることができるのだろうか。
ただそんな形の中こちらに向ける双眸だけが、唯一真っ直ぐで綺麗だと思った。
嫌な顔をされてなお声をかけたのは、その目のせいかもしれない。
「アンタ、すげーカッコだけど……」
「……このコ、酷い傷なんです。病院連れて行かなきゃ……」
「……」
仮にも10代女子高生という、身なりに意識がいくだろう年代で、こんな酷いカッコを人前で晒してなお気にしているのは、胸に抱いた小さな猫のこと。
周りの人間は我が身大事で帰路を急いでいるというのに。
変な、奴。
変な奴だけど、気になってしまった。
どこかで聞いた事のある声のような気もした。
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