第4話
「また振られてんのか、おまえは」
ごつん、と頭頂部に重たい衝撃を受けて、グエッと不気味な悲鳴をあげた私。
痛む頭をさすりながら振り返ると、ビョンと縦に長い黒縁眼鏡の男子の姿があった。
「篤(あつし)くん、今教科書の角で叩いたよね?それ、めっさ痛いからね?」
北条 篤(ほうじょう あつし)くん、3年になって同じクラスになった男子。
矢崎くんの数少ない友人である彼は、矢崎くんとは180度異なる性格をしている。
誰とでも仲良く分け隔てなく付き合えるし、女友達も多い。話題も豊富だし、一緒にいて楽しい奴。
「悪い、悪い、ちょうどな、こう、手を振り下ろした先に台があってな……」
「ふざけんな!」
人の頭を台扱いした制裁は、背後からの膝カックン!長身者はし易くっていい!
「てか、お前も諦めないねぇ」
「あんたまで……てか、矢崎くんと親しいんでしょ?いい加減彼の好みのタイプ教えてよ。何回お願いしたと思ってんの」
そう。数少ない矢崎くんの友人である篤くんには、もう何度となくお願いしてる。
せめて好みのタイプになりたいって思うから。
それなのに、何度聞いても返事は一つ。
「お前は、そのままでいけ」
同じ言葉がまた降って来た。
「また?はぐらかさないでよ。私真剣に聞いてるよ?そのままの私でいっていつも振られるんだよ?彼のタイプじゃないってことじゃん」
分かってる。
賑やかな事を嫌う彼のタイプは、きっと大人しくて静かな子だ。
でも、そんな子を演じたところで振り向いてもらえるわけない。
そもそも大人しくて静かな子だったら、気づかれないまま短い中学校生活は終わってしまう。
……そうじゃなくても、既に卒業まであと僅かに迫ってる。
崖っぷちなのに。
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