第3話

「うぅ……、今日もダメでした。教科書ありがとう、亜紗ちゃん」



告白の報告は見ていて分かってるのに、敢えて報告。亜紗ちゃんから受け取った教科書がやけにズシリと重たかった。


視聴覚室へ向かいながら、既に小さくなった矢崎くんの背中を見る。


やっぱり、かっこいい。



「諦めないねぇ、」


「諦めたくない。私以外の人が矢崎くんの彼女になるなんて絶対ヤダ。付き合えないならせめてそれは断固邪魔する!」


「いないよ、そんな強者。あんたの告白見てて今までいた矢崎の隠れファンも、早々に諦めてるって。告白してくるあんたに「無理」ってただ一言。愛想も優しさも皆無。あんなの見てて、いざ出陣!なんて変わり者いるわけないよ」


「良かった!私、無駄に振られてない。ライバル蹴散らしてるってことだもんね」


「そこ、喜ぶとこ?」


亜紗ちゃんの溜息はこうして今日も盛大につかれるのであった。


今の私達のやり取りだけだと、矢崎くんがとてつもなく冷たい男子のように聞こえるけど、違う。


彼はどこにでもいる、普通の男子中学生。


身長175㎝、ソフトテニス部の副キャプテンで、後輩の面倒見がいい優しくて頼りになる人。


成績は中の上位で、得意科目は理科。


誰とでもそつなく付き合える彼は、だからと言って友人が多いって方じゃない。


一人で読書に勤しむ姿を見ることがどちらかといえば多い。


でも、クラス行事は率先して裏方での力を振るうし、頼られれば嫌とは言わず手伝ってくれる。

でも、あまり賑やかなことは望まないみたいで、クラスで馬鹿騒ぎしてる男子とは距離を置いている。


仲の良い友達と、趣味の話をしている彼の笑顔は無邪気で可愛い。


最初に彼を見た時は一目惚れだったけど、彼を知るにつれて、私はどんどん彼に惹かれていった。


本当に好きなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る