第2話
「じゃあ、行くから」
そんなつれない言葉を落として、私から離れて行く矢崎くん。
逆三角形の背中が愛しいよー。抱き着きたい位好きなんだけどな。
「ひらり、今日の恒例行事終わったの?5限視聴覚室移動だよ」
「亜紗(あさ)ちゃん……」
廊下の壁に背をもたれさせ、私の告白を見守っていた友人の眞山 亜紗(まやま あさ)ちゃんは盛大な溜息を吐いている。
美人は溜息をついても絵になるなぁ、と思ってしまう彼女はすっきりとした目元と、きめの細かい色白の肌、サラサラしたツヤのある長い黒髪の美少女だ。
そんな彼女が、こんな風に盛大な溜息をつくのも無理もない。
思い立ったら即実行の、予測不可能な私の告白に毎回付き合わされる彼女の溜息を吐きたい気持ちも分かる。
矢崎くーん。
君が頷いてくれたら、彼女の心労も減るんですよ、確実に。
「あんたも大概にしなよ。諦めようよいい加減にさ。アレはダメだよ。望み薄いよ」
う。
「1年の時から告白し続けて、普通なら折れてるって。それでもダメってことは、もう望み薄なんだよ」
うう。
亜紗ちゃんと親しくなったのは2年に進級して、同じクラスになってから。
最初のうちは諸手を挙げて応援してくれていたのに、矢崎くんの頑なな態度に、私を諦めさせる方向に傾いて来た今日この頃。
切ないなぁ。
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