第85話
川原くんも、西条さんもとても感じがいい人達だった。
明るくて楽しい。
転校先で彼らと出会えたことは宇野くんにとってとても嬉しいことだっただろうと思う。
始めて会ったばかりなのに、水族館に着く頃には森さんや茶原さんともすっかり仲良くなっていた。
「市原さんと高田くんって付き合い始めたばかりなの?」
「そう、分かる?」
「分かる!なんだか初々しくて可愛いカップルって感じ」
「そうかなぁ」
「高田くんこんな可愛い彼女がいて幸せだね」
「はぁ、なにいってんだか」
「照れてるんだ、可愛い!」
市原さんと西条さんがキャッキャッとはしゃぎながら、照れて頭をかく高田くんをからかっている。
本当に楽しい人だなって思う。
宇野くんが好きになったの、分かる気がする。
彼女を見ていると、なんだか自分がとてもダメな人間だと思い知らされる。
きっと友達だって多くて、皆から好かれているんだろう彼女を羨ましいと思う。
同じ名前でも全然違う。
情け……ないなぁ。
「御門さん、どうかした?元気ないけど、車酔い?」
前に座っていた川原くんが声をかけてくれた。
ダメじゃん。初めて会った人に心配かけてどうするの。本当に私ってダメだ。
「だ、大丈夫。今から行く水族館のこと考えてた」
「ペンギン館で餌やりとかもできるよ」
「そうなの?楽しみだな」
「せっかく皆で遊ぶんだからさ、楽しもうぜ?いろはちゃん」
いろはちゃんと名前で呼ばれて、ほんの少し驚いてしまった。
考えてみれば、男の人に名前で呼ばれたのは宇野くん以外では初めてだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます