第84話

水族館までは森さんが車を出してくれることになって、ホテルのロビーで宇野くん達と待ち合わせること担っていた。


支度を済ませてロビーに降りると、待ち合わせの15分前だというのに、既に宇野くんも昨日見かけた綺麗な彼女も来ていた。


私達がロビーに降りてくると宇野くんが駆け寄ってくる。



「おはよう」


「おはよう」



無邪気な笑顔の宇野くんに、それぞれが複雑な思いを抱えてそれに答える。



「茶原さん、森さんお久しぶりです。今日はあえて嬉しい」


「久しぶりだね。少し痩せた?」



森さんがそう尋ねると宇野くんは「そんなことないですよ」とヘラっと笑う。



「あ、みんなに紹介します」



そう言って宇野くんは後ろにいた男女を皆の前に促した。



「クラスメイトの川原 友也(かわはらともや)と西条 彩波(さいじょういろは)」



え?


彼女の名前を聞いて言葉を失った。



「初めまして。宇野とは同じ名前を切っ掛けに親しくなったんです」



ショートカットが似合う綺麗な顔立ちの西条さんが、一歩前に出て丁寧にお辞儀をした。


それに答える形で私たちも慌てて頭を下げる。



「いろはって名前、案外珍しくないのかな?」


「え?」



市原さんの言葉に西条さんが不思議そうに首を傾げた。



「この子もいろはって言うの。御門 いろは」



市原さんが私の腕を引いて彼女の前に引っ張り出した。



「そうなんだ!すごい偶然だね」



無邪気な様子で西条さんは私の手をとり、よろしくねと笑顔で言ってくれる。

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