第44話

「俺さ、デートしたのも、誰かとお揃いのストラップとかつけるのも初めて」



展望台から海を見ながら、隣にいる宇野くんがボソッとこぼした。


独り言みたいだけど、私の耳にもちゃんと届いたから、私も彼に答えた。



「私も、初めて。相手が宇野くんで、すごく嬉しい」



素直な気持ちを口にするのって、すごく恥ずかしいし、抵抗があるとおもっていたけど、今は言いたい。この気持ちを口にしないと、消えて無くなってしまうような気がして。


宇野くんの手をキュッと力を込めて握った。


宇野くんも握り返してくれて、お互いがお互いをジッと見つめた。


好きという気持ちが溢れてきて、止まらなかった。


止めるつもりもなくて……。



「宇野くん」


「ん?」



優しく見つめられて、本当ならすごくドキドキして緊張するはずなのに、今は何故かとても穏やかな気持ちだった。


まるで今目の前に見えている凪いだ海の様に。



「わたし、宇野くんのことが……好きです」



初めて感じた恋心。


宇野くんと話す様になってまだ少しの時間しか経っていない。


入学してから1年間同じクラスでいた時は、なんとも思っていなかったし、視界にだって入ってなかった。


それは、私が見ようとしていなかったからだけど。


これからはずっと見ていたい。


できることならば、隣でこんな風に。


ねえ、宇野くん。それを望むのはわがままですか?


私の告白に一瞬驚いた表情をしたけれど、直後、私は宇野くんの広い胸の中に抱きしめられていた。



「いろは、好きだよ。俺も、ずっとずっと好きだった」



宇野くんの声は泣き出しそうなほど切ない響きを含んでいた。


どうして?


なんでそんな苦しそうな声で言うの?


宇野くんの告白は何よりも幸せな言葉のはずなのに、私まで泣きたくなってしまった。

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