第43話

「宇野くん……」


「いろは、外に行こう。海もっと近くで見たくない?」


「う、うん」



宇野くんに手を引かれて水族館を出た。


海の側を歩きながら、隣に並ぶ宇野くんの横顔を見上げる。


なんだか少し寂しそうな、そんな横顔に急に不安になった。


宇野くん、明後日の図書ボランティアでまた会えるよね?


新学期、クラスが一緒かは分からないけれど、学校でだって会えるよね?


言葉にして聞けばいいのに、何故だろう聞けなかった。


ただこうして隣に並んで歩けている奇跡が、パッと消えてしまいそうな……なぜかそんな不安が襲って来て仕方なかった。



「くしゅんっ、」



急に鼻がムズムズしだして、クシャミが出始める。


海の側なら花粉の量も少ないだろうと思ったのに。本当に花粉って嫌だなー。


せっかく宇野くんと2人で歩いているのに。



「いろは、寒い?大丈夫?」


「ううん、これ、多分花粉だから」


「そっか。じゃあどっか中に入ろっか」



花粉は場所を選ばないからなと笑いながら、近くの店まで2人で走った。


宇野くんはこの日ずっと手を離さずにいてくれた。


海の側の観光案内所に展望台があって、そこへ登った。


近くで見るのとは違って展望台からは、水面の反射がキラキラと遠くまで光って見える。

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