第2話
うちの高校は、2月の後半になると定期テストが始まり、それが終われば家庭学習期間と称して休みに入る。
各教科の単位認定を行う査定会議が3月の中旬にあって、ここで追試の必要な生徒には連絡が行くようになっていた。
もちろん私は、偏りはあるものの、追試を受けなければいけないほどの成績に不安のある教科はない。
実質長い春休みに入り、のんびりと過ごす天国のような日々を送っていた。
いわゆる引きこもり。
春って、日差しが暖かくて、植物が芽吹いて、景色が柔らかくて、明るい色に染まっていく季節だと思う。
窓越しに見ていれば、それはとても優しい季節なんだろう。
「……ぐしゅ、……くしゅっ、あー、もうダメティッシュ足りない、目が痒い」
机の上の箱から抜いたティッシュが、最後の一枚だと霞む視界の端に見えて絶望した。
家に引きこもった娘の部屋の窓を、全開にして空気の入れ替えだと宣う母は、『花粉症の脅威』を全く知らない人間だ。
「家にこもるのは構わないけど、部屋の掃除とか換気はちゃんとしなさいよ」
「分かってる!」
母の小言は耳タコだ。
分かってはいるけれど、だからって思う通りに出来るわけないのに。
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