第11話

諦めが悪くて、だけど卑屈なこの性格はきっと一生変えられないんだろう。


比呂が私と同じ気持ちで、私の隣で一生笑っていてくれない限り。


「ねぇ、比呂」


「ん、なに?」


「最後にもう一度だけ、悪足掻きしたいんだけどいいかな?」


ハンカチで顔を拭いて、いつの間にか置かれていたコーヒーに手を伸ばした。


最初は慣れなかった苦味と渋み、そして仄かな甘味をゆっくりと味わう。


心を落ち着かせる儀式みたいにして、コーヒーを一口、二口飲んだ。


比呂は、そんな私を何も言わず待ってくれていた。


「比呂」


「ん?」


改めて比呂の顔を見つめた。


1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒……


「私ね、今までも、今も、そしてこれからもずっと比呂のこと応援してる。比呂の夢が叶うって信じながら……だから、」


だから、今までありがとう……。


そう言うつもりだった。


7秒間、逸らされることのない比呂の視線を痛いくらいに感じながら、もうそれだけで十分だと満足しながら。


「寧々、寧々の話を遮って悪いけど、俺の話聞いてくれないか?」


比呂からの提案に、戸惑いはしたものの、何故か焦った様子の比呂が気になって頷く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る