第8話
誰が言ったんだっけ。
7秒間、逸らすことなく見つめ合えた2人は、必ず恋に堕ちるって。
私と比呂はたった7秒だって、見つめ合えない。
「……な、に」
声が震えた。
「あのな、俺、アメリカに行くことになった。尊敬してる教授が来いって言ってくれて……ずっと夢だったから……」
夢を語る比呂の、活き活きとした表情も愛おしいよ。
「よかったね」
「今月末には一度向こうに行くことになってる……だから」
だから、と言葉を切った彼の表情に一瞬陰が差す。
あぁ、そっか。
自分からは言い辛いのか。
私から言って欲しいんだ。
そだね。
始まりは私からだったから、終わる時も私からじゃないと、本当の別れにならないとでも思っているのかもしれない。
狡い、な。
比呂は狡い。
でも、そんな比呂も愛おしいと思ってしまう。
とことん比呂に惚れてるんだなぁ、私。
「ねぇ、比呂。比呂は私の事どう思ってた?」
過去形の、その言葉をどう思ったのか、比呂は不思議そうに首を傾げた。
「寧々?」
「私はね、あの頃と変わりなく比呂のこと……愛してるよ。だから、私のこの想い迄捨てないでね?私の事は……捨て……っ、」
喉の奥から迫り上がってくる嗚咽を、無理やり押し戻し、鼻から吸った空気を飲み込んだ。
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