結局私は全然成長していない。

彼の事を思い遣るふりをして、『大人の恋』をしている気分になって。

本当はもっとぶつかっていきたかった。

喧嘩だってしたかった。

「好きだ」って声に出して言いたかったし、抱き締めたかった。

大人の恋愛はこういうものだなんて、カッコつけずに、彼に遠慮なんかせずに、想いのままに……。

じわっと熱いものが込み上げてきて、視界が見る間に歪んでいった。

「寧々？」

比呂の驚いた声音に自らの愚行に気付いた。

馬鹿だ。泣いちゃうなんて馬鹿。

今から別れ話をする相手に泣かれるなんて、きっと面倒なことを嫌う比呂の一番嫌がることだ。

「寧々……どうした？」

泣き顔を晒し続けることはできなくて、俯いて首を振れば、涙は目尻から左右に振られ落ちる。

カッコ悪い。

いい歳した大人が、別れ話位でみっともない。

でも。

止まらない。

齢だけ重ねて、心はずっと幼いままだ。

自分の言葉すら紡げない。

でも、離れていく彼に何を言えばいいのか分からない。

大人の女はこういう時どういう風にするの？

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