第4話
友人達はそんな私を馬鹿だと罵ったけれど、始まりを知らない彼女達の言葉は私になんの傷もつけなかった。
付き合ってもらえてる。
彼女という肩書きがある。
それだけで十分。
それに私も仕事勤めになってからしばらくは、自分の事に精一杯だった。
たまにくる比呂からのメールに飛び出していっても、比呂の話を聞きながら寝てしまう事だってあった。
「寧々も大変だな」
気遣ってくれる言葉が嬉しくて、会う時間が減っても、それは彼が私の身体を心配してくれるからだと思う事ができた。
そのうち此処で会える事も本当に減って、月に1度携帯越しに聞こえる彼の声を糧に日々過ごしていた。
だけどそのうち電話の回数すら減って、それでも細く頼りない糸にしがみつくようにして、彼からの連絡を待った。
けれど、もうダメなのかと思ったあの瞬間がついに訪れた。
比呂の友人から、比呂の渡米の話を聞かされた時。
そんな大事なことすら、私は話してもらえない。
ただの友人よりももっと下。
知り合いの分類すら、きっとされていなかったのだと。
悲しいと思うよりも、虚しかった。
数少ないメールや電話に踊らされていた自分がひどく滑稽で……もう、笑うしかないよ。
夏の初めに一度電話をもらった。
あの時、本当は問い詰めてしまいたかった。
けれど彼の声を聞いているうちに、そんなことをしたらこの繋がりさえ切れてしまうのだと思ったら、怖くなった。
だから、もういいんだって思った。
比呂にとって私がどんな存在なのかは知らない。
どうしようもなく暇な時に、その暇つぶしに付き合ってくれる、大学時代の知り合い。
そんな立ち位置でも構わない。
この繋がりを断ち切らずにいられるなら私は彼のための道化にだってなれる。
本気で、そう思った。
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