第24話
「あー、あの子ね。高い口止め料になったわ」
うんざりした様子の健太に思わず問い詰めてしまった。
「香奈が悪いんだぞ。俺たちの事は誰にも言いたくないなんて言うから、社内恋愛を知られたくないのかって思ってたのに、あの子に香奈と会ってるを見られて脅されたんだよ。他に言わないから食事に付き合って欲しいって」
「そう……だったの。でも、健太だって、社内には内緒にしたいんじゃ……」
「あー、まぁ、どうせ週明けには上に報告するつもりだったし」
「報告?」
「……俺たちのこと」
「えっ?急すぎない?」
お互いの誤解がとけて、これから普通の恋人同士になれるのは嬉しいんだけど、上司にわざわざ付き合ってるなんて報告しなくてもいいんじゃ……。
私達の会社、社内恋愛禁止されているわけじゃないし。
そういうと健太は、「付き合う位なら別に報告なんてしないよ」
と言って、私のお腹にそっと右手を触れさせる。
なんだろう?
そう思って首を傾げる私の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。
「今時、デキ婚なんて珍しくもねーけどな」
「は?」
「香奈、自分の体の事だろ?全然分かんないの?」
健太の呆れた声に訳が分からなくて、戸惑うばかりだ。
「いるんだって。香奈のお腹の中に、俺らの子が」
「は?」
「鈍い!お前、妊娠してるんだって。貧血って妊娠初期では珍しくないらしいぞ。お前の場合は栄養失調も加わってるけどな」
軽いデコピンを食らって、ようやく健太の言葉の意味を理解できた。
……て、妊娠?私が?
言われてみれば、食欲がなかったことも、あの吐き気も……。
健太の事でいっぱいいっぱいだからって、私ってどれだけ鈍いの。
自己嫌悪に陥りそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます