第18話

一瞬茫然としてしまって、それでも我に返って、健太が来る方向とは反対の方向へ走り出した。



「香奈?」



背後で健太の声が聞こえた。

でも、止まる気はなかった。


コンビニから、バス停とは逆の方向へと走る。

ちらりと後ろを振り返れば、健太の私を追う姿が目に入って、もっとスピードを上げた。



「はぁっ、……っ、」



普段ほとんど運動することのない体は正直だ。ほんの少し走っただけで息が切れてしまう。


こんなに体力がなかったっけ?


だんだん息が苦しくなって、体が重い。


手や足が痺れてくる。


追いかけてくる健太から逃げるために走っていることを考えたら、健太が恨めしく思えた。


さっさとあきらめてくれたらいいのに。


方向違いの愚痴をこぼしてしまう。



あ、やば……。


そう思った直後、


目の前が暗くなっていくのが見えた。


そして、フッと意識が途切れたのを自分で自覚する前に何も分からなくなった。

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