一途に、真摯に、ただ思いを伝える。
第17話
定時をかなり過ぎて仕事が終わった日、私の携帯に健太から着信があった。
画面に示された健太の名前に、携帯を持っていた指が震えた。
どうして、今頃連絡なんかしてくるんだろう。
ただの同期として、彼と会話できる冷静さが自分に今あるのかと考えて、なかなか電話に出られない。
結局出ることができないうちに電話は切れてしまった。
ホッとしてバッグに携帯をしまい、会社を出る。
通勤に使っているバス停は会社から少し歩いた場所にある。
日は暮れているとはいえ、蒸し暑い空気に何となく息苦しかった。
少しでも何か口に入れなきゃと思い、最近ではスムージーを口にしている。
バス停に行く前にあるコンビニに寄って、飲み口の優しいジュースを探した。
買い物を済ませて、コンビニを出た私の目の前に、健太が駆け寄ってくるのが見えた。
「香奈!」
普段だったら、会社の近くなんて知った顔に見られたら困るだろうと思って待ち合わせもしたことない。
名前だって、香奈と呼ばれるのは二人きりで過ごす時間の間だけだった。
こんな人通りのある場所で、会社の人だっているかもしれないこの場所で、健太が私の名前を呼ぶことに驚いてしまった。
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